2014 Fiscal Year Research-status Report
活動銀河核セントラルエンジンの新描像を確立するX線と可視光の同時観測
Project/Area Number |
26800095
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
野田 博文 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 基礎科学特別研究員 (50725900)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | X線天文学 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年4月から2014年4月まで、X線天文衛星「すざく」と日本の5台の可視光望遠鏡「ピリカ」、「木曽シュミット望遠鏡」、「MITSuME」、「なゆた」、「かなた」を用いて、活動銀河核NGC 3516を同時モニタし、歴史的に暗い時期のX線と可視光の同時観測に成功した。2014年度はこれらのデータ解析を行い、X線と可視光の中で変動成分だけのフラックスを求めて比較したところ、両者がよく相関していることを突き止めた。この結果は、巨大ブラックホールの周囲に形成される複数のX線生成領域のうち、暗い時期に卓越するものが降着円盤に隣接することを示し、X線領域の幾何を議論することができた。この結果は、国際会議と国内学会で全世界に向けて発信し、現在、投稿論文としてまとめている。 NGC 3516銀河核において明るい時期に現れるX線領域の幾何を調べるため、Swift衛星で1週間に一回短い時間の観測を行い、明るくなっていたら「すざく」のTime of Opportunity 観測を開始する提案を、「すざく」AO-10公募で行い、Priority-Aで採択された。NGC 3516が明るくなり観測が開始された時に備えて、X線および可視光データの解析の準備は完了している。 別の活動銀河核NGC 4593においても、「すざく」、「ピリカ」、「木曽シュミット望遠鏡」、「MITSuME」、「なゆた」、「かなた」を組み合わせたX線と可視光の同時観測を実施した。現在、X線および可視光のデータ解析を行っている。また、NGC 3227銀河核のSiwftデータの解析を行い、暗い時期に可視光とX線が良く相関することを突き止めた。 2015年度打ち上げ予定の日本の次期X線天文衛星ASTRO-Hに搭載される検出器のフライト品の性能試験に参加し、特にX線カロリメータの冷却に不可欠となる冷凍機ドライバーの動作検証に貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活動銀河核NGC 3516は、2014年度までのモニタにおいて暗い時期にあったため、暗い時期に現れるX線成分に関しては、放射源の幾何を調べることができた。またNGC 3516以外の天体でも、暗い時期に卓越するX線放射源に関して、同様の解析結果が得られた。一方、明るい時期に現れるX線成分の放射源がまだ調べられていないため、「すざく」AO-10公募において、明るい時期を狙う観測を行った。この観測はまだ行われていないため、明るい時期に卓越するX線放射源についての議論はまだできていない。 次期X線天文衛星ASTOR-Hは2015年度の打ち上げのため、検出器を衛星に搭載した状態での試験はまだ行われていない。
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Strategy for Future Research Activity |
「すざく」AO-10 公募でpriority-Aで採択されたNGC 3516銀河核の観測データを解析し、明るい時期に現れるX線放射源が巨大ブラックホールの周辺でどう分布するかを明らかにする。また、Swift衛星、XMM-Newton衛星で得られた複数の活動銀河核アーカイブデータを解析し、明るい次期の活動銀河核のX線成分が紫外光/可視光とどう関連するかを見ることで、X線放射源の分布を特定する。これらをまとめて、活動銀河核のセントラルエンジンの描像を確立する。 次期X線天文衛星ASTRO-Hの、検出器を衛星に搭載した状態での熱真空試験や衛星総合試験に全面的に参加し、検出器の動作に問題がないか、しっかりと目を配る。また打ち上げ後には、軌道上でのキャリブレーションに貢献する。
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