2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26800099
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
馬場 淳一 愛媛大学, 宇宙進化研究センター, 特定研究員 (90569914)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 銀河形成 / 大規模シミュレーション / 次世代観測 / 星間化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近傍および遠方星形成銀河の星間ガスの熱的・運動学的性質を理論的に明らかにすることが目的である。そのために、星間ガスの水素、ヘリウム、炭素、酸素といった主要元素の電離・結合・分子生成・解離などの詳細な化学反応と、それに伴う冷却・加熱過程を組み込んだ、高精度高分解能N体/SPHシミュレーションコードを開発する。
本年度は、簡易的な分子生成反応を組み込んだ、天の川銀河の大規模シミュレーションデータを用いて、銀河渦状腕構造の観測的検証法に関する成果 (Baba et al. 2016)、および実際の観測データへの適用 (Egusa, Baba et al. 2017) に関する論文を出版した。また、世界最高レベルの分解能のシミュレーションを用いて、星形成の母体となる巨大分子雲 (GMC) の形成進化に関して新たな描像を提示した (Baba et al. 2017)。
一方、現実的な化学反応を考慮した開発中のコードのモデルに問題点を発見したため、その解決に取り組んだ。改良した計算モデル及びコードでは、電離炭素の微細構造輝線 [Cii]158um を計算することが可能となった。この輝線は基本的に光学的に薄いため、輻射輸送計算をすることなく観測と比較が可能である。また、これまで実装を断念していた、一酸化炭素(CO)反応と、それに伴う冷却過程をコードに組み込みこんだ。これは、本研究課題開始後に、海外の他の研究者により簡易的なCO反応過程が提唱されたことで実現可能となった。なお、今回の研究で開発した化学反応と冷却・加熱過程の星間化学モデルのコードのライブラリ化を行った。ライブラリ化することで、他のコードへの移植性を高めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、開発中のコードのモデルに問題点を発見したため、その改良に取り組んだ。具体的には、電離炭素の微細構造輝線の強度の計算の間違いである。その問題点は、状態間の統計平衡を仮定することで解決した。現在、修正した新たなコードを用いた再計算を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
簡易的な反応を考慮したコードに関してはすでに研究成果 (査読付き論文) が得られている。一方、現実的な化学反応を考慮したコードに関しては、発覚した問題点を解決し、現在、修正した新たなコードを用いた再計算を行っている。当初の予定よりも詳細な反応は冷却・加熱過程を考慮することができたため、観測で期待される輝線強度を評価し、観測データとの比較を目指したい。
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Causes of Carryover |
本研究で開発したコードに問題点が発覚し、計算をやり直す必要が生じたため。なお、既に発覚したコードの問題点は修正されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
問題点を解決しコードを用いてシミュレーションを行い、天の川銀河を対象とした星間ガスの詳細な熱的・運動学的性質を明らかにする。
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Research Products
(3 results)