2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26800101
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松林 和也 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (60622454)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 矮小銀河 / スターバースト / 銀河進化 / 可視光 / 面分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近傍宇宙の星質量が小さく、激しい星形成を行っている銀河をサーベイデータから探し、その銀河を広視野面分光観測を行って、矮小銀河の星形成の様子を明らかにすることである。 2015年度は、前年度までに選出した矮小銀河約30天体から、最も観測が行いやすく特徴的な2天体を選出した。これらの天体はHαの輝線等価幅が1000 Å以上と非常に大きく、激しい星形成を行っている。この2天体を広視野面分光観測するために、国立天文台 岡山天体物理観測所に観測プロポーザルを提出し、採択された。観測に使用した装置は、可視光面分光装置KOOLS-IFUである。観測は2015年12月25日から27日に行われた。観測した晩は月がほぼ満月で、観測天体が月に近かったため背景光強度が大きかったが、天気は概ね良く、十分な観測データが取得できた。特に明るい輝線であるHαや[OIII]λ5007などは、生データの段階でも天体からの輝線が検出できていることが確認できた。 観測完了後から、得られた観測データの解析を始めた。各天体フレームに対して、天体データ解析ソフトIRAFを使って、ファイバーごとにスペクトル切り出し (一次元化)、フラット補正、波長校正、背景光引き、輻射強度較正などを行った。1天体に対して20フレーム以上の天体フレームを取得したので、各天体フレームを足し上げてデータのシグナルノイズ比を改善させたい。しかし、天体位置がフレームごとに異なり、またKOOLS-IFUの望遠鏡焦点面側では、円形ファイバーが最密充填構造で並んでいるため、単純に各フレームのfluxを平均したり、既存のソフトウェアで天体位置をずらしながら足し上げることができなかった。そこで、各波長の画像を正方格子グリッドに変換しながら、各フレームの位置ずれを補正し足し上げるソフトウェアを開発中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度の研究計画は、激しく星形成を行っている矮小銀河に対して、KOOLS-IFUで可視光広視野面分光観測を行い、観測データの解析を始めることであった。 対象天体を観測するための観測プロポーザルが無事採択された点、また観測日の天気はまずまずで研究目的が達成できそうなデータが得られた点を考えると、本研究課題は概ね順調に進んでいるといえる。 得られた観測データの解析については、予想よりも時間がかかっている。データ解析が遅くなった原因は、得られた観測データに原因不明の迷光が見られ、その除去方法の検討に時間がかかったこと、研究業績の概要で述べた位置ずれフレームの足し上げソフトウェアや、宇宙線イベント除去ソフトウェアに時間がかかったことが挙げられる。観測データの解析に予想していたよりも時間がかかっているものの、解析は着実に進んでおり、2016年度の早い段階で解析が完了する目処が立ちつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の研究計画は、KOOLS-IFUで観測した激しく星形成を行っている矮小銀河のデータ解析を完了し、さらに他波長の観測データを加えて、この銀河で起こっている星形成の様子を明らかにすることである。 現在までの進捗状況で述べた通り、完了しつつあるKOOLS-IFUデータの解析を2016年度の早い段階で完了させる。この解析と平行して、他の望遠鏡・観測装置によるデータアーカイブを活用し、観測した天体の物理的性質を多面的に理解する。例えば、SDSS可視光画像とスペクトル、近赤外線全天サーベイデータ2MASS画像により、ターゲット銀河の星の分布が詳細に分かる。また、紫外線宇宙望遠鏡GALEXによる紫外線画像と可視光画像を組み合わせることで、星形成領域に関する情報が得られ、また高赤方偏移の銀河と比較する上で重要な観測量となる。得られた結果について研究協力者と議論し、ターゲット銀河で起きている星形成の様子を明らかにする。 2016年度後半に得られた観測結果を論文にまとめて公表する。論文執筆は研究協力者と相談しながら進める。
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Research Products
(5 results)