2015 Fiscal Year Research-status Report
Planck時代におけるインフレーション模型およびその再加熱過程の精査
Project/Area Number |
26800121
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 和則 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90596652)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 初期宇宙論 / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. インフレーション終了後の再加熱初期における重力的粒子生成の効果を評価し、これによる暗黒物質生成機構を提唱した。またこの効果を一般の拡張重力模型で評価する簡便な手法を開発し、多くの拡張重力模型ではアインシュタイン重力に比べて粒子生成が顕著になることを指摘し、その宇宙論的影響を調べた。さらにある種の拡張重力模型では、再加熱期にインフラトンの短波長ゆらぎに不安定性が現れることを指摘した。 2. AMS-02衛星が宇宙線反陽子フラックスの超過成分を報告したことを受け、暗黒物質の崩壊・対消滅によりこの超過成分を説明するシナリオを考案した。特に、超対称模型におけるウィーノ暗黒物質がそのよい候補であることを示した。 3. 最新のPlanck衛星による宇宙背景放射の観測結果を用いて、暗黒物質の対消滅断面積に対する厳しい上限を導いた。 4. ヒッグスインフレーション模型において、アクシオン等曲率揺らぎが自然に抑制されることを示した。また、ヒッグス場が電弱スケールより遥かに高いスケールで相転移した可能性があることを指摘し、このときに発生する重力波の強度を見積もった。 5. 超重力カオティックインフレーション模型から自然にシーソー機構を通して、軽いニュートリノ質量が導かれることを示した。この模型においてニュートリノ質量差や混合角などの実験データが再現されること、再加熱およびレプトン数生成機構がうまく働くことを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画の主目的であるインフレーション後の再加熱期の理解に大きな進展があった。これまでの再加熱の解析はインフラトンと標準模型粒子の間の相互作用(ゲージおよび湯川相互作用など)を仮定したものであったが、我々は普遍的な重力相互作用のみによる粒子生成・再加熱の効果を詳細に評価することに成功し、重力的粒子生成が宇宙論的に重要な役割を果たすことを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
インフレーション後の再加熱の物理はまだ発展途上であり、特に標準模型ヒッグス場の再加熱期での安定性について調べたい。トップクォーク質量などの最新の実験結果によると現在の真空は準安定であり、これを信じるなら再加熱期にヒッグス場のゆらぎが成長し真空が崩壊する可能性がある。逆にこのことからインフレーション模型に制限が付けられる可能性があり、ヒッグス場のダイナミクスを詳細に調べたい。
|
Causes of Carryover |
コンピューターを予定より安い額で購入することができたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費(コンピューター関連のソフトウェア)にあてたい。
|