2014 Fiscal Year Research-status Report
次世代チェレンコフ望遠鏡アレイを用いたknee領域宇宙線化学組成計測の準備研究
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26800126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大石 理子 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (10420233)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超高エネルギーガンマ線 / 大気チェレンコフ望遠鏡 / 宇宙線化学組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、宇宙線荷電粒子が大気上層を通過する時に発生するDirect Cherenkov光を地上の望遠鏡を使って集光・測定する手法が10-1000 TeV領域の宇宙線重元素スペクトルの計測に有効であることが分かってきた。本研究課題では、シミュレーションを用いて、現在進行中の次期ガンマ線地上天文台計画CTAの望遠鏡アレイが、上記の観測手法で宇宙線重元素フラックス計測にどの程度の感度を持ち得るかの推定を行い、また既存の宇宙線重元素データ解析手法の改良を試みる。この目的に沿って、平成26年には下記を行った。 1. CTA大規模アレイに対応した宇宙線鉄(z=26)のシミュレーションデータを生成し、先行研究で開発された解析手法を現行のCTAシミュレーションデータ解析プログラム中に実装し、検出イベント数の見積もりを行った。CTAアレイは複数のタイプの望遠鏡から構成され、様々なサブアレイの選択が可能であるが、中口径(直径約12m)望遠鏡24台のサブアレイに対する期待検出イベント数は先行実験(同等口径の望遠鏡4台のアレイ)の観測結果と比較して一桁高い値が得られた。 2. データ解析手法の改善 チェレンコフ光イメージ中の光子到来時刻勾配を用いた粒子の飛来位置再構成手法を導入し、30 TeV近傍で飛来位置の分解能が既存の解析手法の60%程度(68%含有半径)に改善されることを確認した。また、CTA望遠鏡の焦点面検出器の時間分解能(大口径望遠鏡 1GHz, 中口径望遠鏡 500MHzのサンプリング)を生かし、Direct Cherenkov光の到来時刻特性を利用したカットを取り入れることで、雑音となる陽子の誤認検出率を有効に下げることができることを確認した。 これら平成26年度の研究内容については、日本物理学会で2度の口頭発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションに使用する計算機の環境・人的資源の両面で、計画立案時の条件が大きく変化するような特段の事象は発生せず、おおむね予定通りに進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に開発した重元素データ解析の改善要素に対応して、全体の解析フローの中のカットパラメータの再最適化を行う。CTA アレイによる観測での宇宙線鉄(Z=26)の電荷数分解能をエネルギー依存性・系統 誤差を考慮して評価し、宇宙線鉄に対する微分フラックス感度を推定する。また、原子番号(電荷量)と GeV エネルギー宇宙線中の存在比から検出が有望な他の宇宙線中の元素群: Si,S,Ca(Z=14,16,20)等についてもシミュレーションデータを生成して上記の解析手法を適用し、鉄と同様の電荷分解能・フラックス感度推定を行う。 宇宙線シャワーシミュレーション記述に使用されるハドロン相互作用モデルについて、現状選択しているQGSJET-IIに加え SIBYLL等の別モデルも試用し、選択モデルの違いが宇宙線重元スペクトル測定に与える影響を検証する。 これらの情報を統合し、 10-1000 TeV領域の宇宙線化学組成エネルギー依存性の理論モデルに対して、 CTAの観測データとの適合度の評価を統計上有意に行うために必要な CTAの観測時間を算定する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は当該年度交付額の約6%であり、申請額から交付額への減額分を考慮した支出内容変更(出張回数の減数他)後に残った端数分である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の端数の次年度使用額は、技術関連書籍(プログラミング言語関連など)の購入、最終年度に結果をまとめる際の近距離の研究協力者との打ち合わせ等に使用する予定である。
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