2014 Fiscal Year Research-status Report
水チェレンコフ検出器を用いた電子ニュートリノ測定の高精度化の研究
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26800128
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 秀和 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (00402769)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
T2K実験は、大強度陽子加速器J-PARCでニュートリノ・ビームを生成し、295km離れたスーパーカミオカンデ(SK)でニュートリノを検出し、ニュートリノ振動の詳細な研究を行う長基線ニュートリノ振動実験である。 本研究はT2K実験において、ニュートリノと反ニュートリノ振動の違い(CP対称性の破れ)測定の結果を世界に先駆けて得るために、T2K実験の後置検出器であるSKでの電子ニュートリノ測定の高精度化、ならびに検出器に由来する系統的誤差の縮小を目指している。本研究では2014年に以下に述べる研究に取り組んだ。 ・ T2K反ニュートリノ・ビームを用いた反電子型ニュートリノ出現現象の探索 T2K実験では2014年から反ニュートリノ・ビームを用いたデータ収集を開始し、本研究では反電子型ニュートリノ出現現象の探索の研究を開始した。2014年度に行った反電子型ニュートリノ出現現象の探索感度の研究から、信号事象と背景事象の運動学の違いを使うことで探索感度の向上が諮れることを示した。 ・ 電子型ニュートリノ測定の高精度化と系統的誤差の削減 電子型ニュートリノ(および反電子型ニュートリノ)出現現象探索での主な系統誤差要因の一つがSK検出器由来の系統誤差である。その改善を目指してSKの詳細な検出器較正2つに取り組んだ。(1)SK検出器内に検出器較正源(光源、放射線源)を挿入して一定期間毎に検出器較正用のデータを収集した。これまでの研究から検出器応答の時間変化を考慮することで電子型ニュートリノ測定の系統誤差が改善できることが見いだされている。(2)SKの大型(50cm径)光検出器は、光電面上の光の入射位置によってその性能や応答に違いがあることが知られており、本研究ではそれらを詳細に測定することを目的に測定装置を開発中である。 2014年には、この測定のための試作機を制作し試験的な測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
T2K実験での反電子型ニュートリノ出現現象探索の研究は、信号事象と背景事象の運動学の違いを用いることで探索感度が向上できることを示すことができ、順調に進められていると判断する。また、J-PARCの陽子ビーム強度も増強され、ビーム強度320kW以上を実現しており、今後測定データ量も増やせる見込みである。 電子型ニュートリノ測定の高精度化と系統的誤差の削減については、SKの詳細な検出器較正によって系統誤差の縮小が可能であることを見いだせており、概ね順調に計画が進んでいると言える。大型光検出器の詳細測定については、測定装置の試作機を制作し、試験測定を実施した。その結果、当初購入を予定していた光源では十分な仕様を満たさないことが明らかになったため、光源の改良または別の光源の選定の両方の可能性を模索している。このような理由から、大型光検出器の詳細測定については現時点ではやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
T2K実験での反電子型ニュートリノ出現現象探索の研究をすすめ、探索感度の向上、測定データ量の増大により2015年度中にその兆候をつかむことを目指す。 電子型ニュートリノ測定の高精度化と系統的誤差の削減を目的に、詳細な検出器較正を進める。今後、検出器のどのパラメータが系統的誤差に重要な役割を果たしているのかを一つ一つ見極めていく必要がある。そのために、様々な検出器較正源を組み合わせて詳細な検出器較正を行うとともに、継続的に詳細な検出器較正を行うための検出器較正装置の開発も進める。 大型光検出器の詳細な性能評価については、2014年に試験機を制作して試験的な測定を行った。試験測定で洗い出された解決するべき課題や満たすべき仕様を取りまとめ、それらを反映させた測定装置を制作・完成させる。それを用いて複数の光検出器について測定を行い、その結果をSKでの物理解析にどのように実装するかを検討する。 最終的には上記全てを統合して世界に先駆けてCP対称性の破れ測定の結果を得ることを目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度に購入を予定していた光源では十分な仕様を満たさないことが明らかになり、光源の改良もしくは別の光源を選定する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には光源の改良または別の光源の選定を終え、測定装置を完成させる。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Neutrino Interaction Physics2014
Author(s)
Hidekazu TANAKA
Organizer
NuFact2014, XVIth International Workshop on Neutrino Factories and Future Neutrino Facilities
Place of Presentation
University of Glasgow, UK
Year and Date
2014-08-30 – 2014-08-30
Invited
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