2015 Fiscal Year Research-status Report
水チェレンコフ検出器を用いた電子ニュートリノ測定の高精度化の研究
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26800128
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 秀和 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (00402769)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
T2K実験は、大強度加速器J-PARCで生成したニュートリノビームを295km離れたスーパーカミオカンデ(SK)に照射してニュートリノ振動の精密測定を行う長基線ニュートリノ振動実験である。 本研究はT2K実験において、ニュートリノのCP対称性(ニュートリノと反ニュートリノの違い)の測定を世界に先駆けて得るために、T2Kの後置検出器であるSKにおいて(反)電子型ニュートリノの出現現象測定の高精度化と系統誤差の削減を目指している。 2015年末までにT2K実験で収集した反ニュートリノビームを用いて、反電子型ニュートリノ出現現象探索を行った。反電子型ニュートリノ出現現象の候補を3事象観測することに成功した。 SKの詳細な検出器較正により、SKの事象再構成アルゴリズムを高性能化し(反)電子型ニュートリノ出現現象測定を高精度化する研究に取り組んだ。そのために、SK検出器内に較正源(光源、放射線源)を挿入して一定期間毎に検出器較正データの収集した。これまでに収集した検出器較正データを詳細に解析し、その結果をSKの事象再構成アルゴリズムに取り込むことで事象再構成性能の高度化に成功した。 平行して、SK PMTを更に詳細に較正するための較正装置の開発に取り組み、検出器較正源挿入装置の制作が完了した。本装置の動作試験を行い、この装置が十分な性能を持つことが確認した。2016年度にはこの装置をSKに導入して運用を開始することを目指している。また、PMTの応答を詳細に測定するための装置開発を進めている。前年度の光源の問題が解決でき、本装置の測定系が完成した。これを用いて空気中での測定に取り組んでいる。同時に、水中での測定をするための装置を製作中である。2016年度にはその装置を完成させ、測定系と統合して装置全体を完成させてPMTの水中試験を開始する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年末までにT2K実験で収集した反ニュートリノビームを用いて、反電子型ニュートリノ出現現象探索を行った。反電子型ニュートリノ出現現象の候補を3事象観測することに成功した。2015年末までのデータでは反電子型ニュートリノ出現現象の統計的な有為性を示すまでには至っていないが、 J-PARCのビーム強度の増強も順調に進んでおり、更なる統計量の増大が見込める。この研究は順調に進んでいると判断する。 SK検出器の詳細な検出器較正のデータ収集を継続しており、検出器較正の結果をSKの事象再構成アルゴリズムに導入することで事象再構成性能の向上に成功した。SKの検出器較正源挿入装置の開発については、装置の性能試験が概ね完了し、開発の最終段階に入っている。2016年度にSKでの運用開始を目指している。この研究についても概ね順調に進んでいると判断する。 PMTの応答を詳細に測定する装置に関しては、前年度にあった光源開発の問題は解決し、本装置の測定器系が完成した。次の段階として、PMTの水中試験に必要な装置を制作中である。前年度の光源の問題の影響もあり当初計画に比べてやや遅れが出ているが、2016年中には全システムが完成し測定を開始できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
T2Kでの反電子型ニュートリノの出現現象探索のために今後もビームデータの収集を継続する。同時に、T2K前置検出器を用いたニュートリノフラックス、ニュートリノ反応断面積の精密測定をにより、反電子型ニュートリノの出現現象探索の系統誤差の削減に取り組み、反電子型ニュートリノの出現現象探索の更なる感度の向上を目指す。 SKの検出器較正源挿入装置の性能試験を完了し、2016年度にSKでの運用を開始する。これにより更に詳細な検出器較正データを収集し、SKの事象再構成アルゴリズムの更なる改良を目指す。 PMTの応答を詳細に測定する装置は2016年度に完成する見通しであり、実際の測定を開始する。
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Causes of Carryover |
2014年度の光源開発の問題で(この問題は既に解決した)、当初計画では2015年度中に制作が完了する予定であったPMTの応答測定装置の水中試験装置の完成が2016年にずれ込んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年前半には水中試験装置が完成する見通しある。2015年度に制作した測定器部と統合して測定装置全体を完成させる。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Hyper-Kamiokande2015
Author(s)
Hide-Kazu TANAKA
Organizer
International Workshop for the Next Generation Nucleon Decay and Neutrino Detector (NNN15)
Place of Presentation
Stony Brook University, USA
Year and Date
2015-10-28 – 2015-10-31
Int'l Joint Research / Invited
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