2014 Fiscal Year Research-status Report
ラムダハイパー核の生成・構造・崩壊理論のsd殻領域への展開
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26800146
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
梅谷 篤史 日本工業大学, 工学部, 准教授 (20454580)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハイパー核 / 原子核殻模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、ハイパー核研究の新たな段階の一つとして注目されているsd殻領域のΛハイパー核について、原子核殻模型により得られる波動関数を用いて、生成断面積、電磁遷移強度、崩壊幅を実験に先駆けて理論的に予測することである。そして、sd殻領域のハイパー核のエネルギーレベルの構造を明らかにし、sd殻領域におけるΛN有効相互作用の各項の強さを決定することである。 平成26年度は、sd殻領域で実験が予定されている19F原子核に対して、波動関数を得るところから始めた。コアとなる原子核について、様々なNN有効相互作用を試すことにより、エネルギー準位や一粒子移行反応の実験結果をよく記述できる波動関数を得た。ハイパー核に対しては、ΛN有効相互作用としてs殻、p殻領域のハイパー核研究で実績のあるNijmegenグループの核力 (NSC97f) のG行列を有効相互作用として用いた。 得られた殻模型波動関数を用いて、19Fを標的核として得られるハイパー核の生成断面積の計算を行った。生成反応にはおもに、(π+, K+), (K-, π-), (γ, K+) 反応の3種類があるが、(K-, π-)反応について実際に行なわれる実験のセットアップを想定しながら、いくつかの入射運動量と散乱角に対する生成断面積を計算した。この計算結果を、並行して行なった(π+, K+)反応の生成断面積の計算結果と比較すると、大きな断面積に寄与する状態の違いが鮮明となった。この結果と、これから行なわれるJPARCでの実験結果とを比較することによって、sd殻領域のハイパー核の複雑なエネルギーレベルの構造を解明することができると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、19Fの原子核を標的としたハイパー核生成の生成断面積を実験に先駆けて理論的に予測することが目的であり、この目的はおおむね達成できている。とくに(K-, π-)反応については様々な実験のセットアップに対応した生成断面積の計算を行なっており、今後行なわれる実験の結果と比較し議論を行うにあたり、必要な計算結果が十分に得られている状況である。また、平成27年度から行う予定であった電磁遷移強度の計算も一部、着手し始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、19Fよりも重い原子核を標的としたハイパー核の生成反応の生成断面積の計算を実施するとともに、構造計算として電磁遷移強度の理論計算を進めていく予定である。 生成反応については、20Neを予定している。また、当初の予定にはなく、p殻領域ではあるが、国内外の実験の状況を踏まえると、12C、10Bを標的としたハイパー核生成についても理論計算が必要であるため、これを研究計画に追加し実施していく予定である。 平成27年度より着手する電磁遷移強度は、p殻領域のハイパー核に対して精力的に実験が行われ、多くのハイパー核のエネルギーレベルを明らかにし、これによって、p殻におけるΛN有効相互作用の各項の強さを決定するに至ったものである。sd殻領域は非常に複雑なエネルギーレベルの構造をもつため、これらを正確に決定するためには電磁遷移強度の理論計算が不可欠であり、この計算を成功させることによって、sd殻領域におけるΛN有効相互作用の各項の強さをより精密に決定することができる。この電磁遷移強度の計算を19Fを標的核として得られるハイパー核に対して行なう。当初はE2、M1遷移を予定していたが、これにE1遷移も追加して、理論計算を進めていく予定である。M1遷移についてはすでに計算を行なっている状況である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた共同研究者との研究打ち合わせの時期が次年度に延期となったため、その分の旅費の執行ができなかったが、そのことによる研究計画の変更は生じていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に延期になった研究打ち合わせを実施すること以外には、平成27年度の予算の使用計画に変更は生じていない。
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