2014 Fiscal Year Research-status Report
新素材プラスチックシンチレータを用いた原子炉モニターの開発
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26800148
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
小野 裕明 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (70453925)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プラスチックシンチレータ / ガドリニウム / 原子炉ニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、従来型のプラスチックシンチレータとは異なる常温硬化型樹脂を使用することで、安価で機能性を有するプラスチックシンチレータの開発を行い、ニュートリノを用いた原子炉出力モニターへ応用することである。先行研究として、新潟大学と企業との共同研究を通じて、原子炉ニュートリノ実験に応用するためにガドリニウム入りプラスチックシンチレータの開発を行ってきたが、発光量が小さく減衰長も短いという点を改善していく必要があった。 今年度は発光量の改善を行うために、シンチレータの製作を企業で行う形から、大学研究室内で行えるように見直し、研究室内で小型サンプルを作成できるように実験室に作成設備の構築を行った。 発光量改善のための方策として、混合する波長変換材の割合、樹脂の混合割合、樹脂の種類の変更などについて検討し、先行研究で作成されたものと比較して約2倍の発光量を持つプラスチックシンチレータを作成することに成功した。また、作成プロセスについても見直し、作成手順を簡素化することで、作成時のばらつきを減らすとともに、製造コストをより抑えられるようになった。 発光量は標準的なプラスチックシンチレータと比較して約50%程度に相当するところまで到達できるようになった。中性子捕獲のためのガドリニウムを添加することで発光量が減少する傾向が見られるため、発光量の維持のために添加するガドリニウムの再選定、最適化を行っている。 更に10cm角、 2cm厚さの中型シンチレータの作成も成功し、コバルト60線源を用いたγ線の測定も行い、γ線のコンプトンエッジを測定することでエネルギー較正を行うことにも成功した。これにより、今後の大型化によるニュートリノ擬似信号の測定に向けておおむね目処がついた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究目標の一つは、先行研究において作成されていたプラスチックシンチレータの発光量の向上であった。本年度はシンチレータの作成プロセスを見直し、大学の実験室で開発する環境が整えられ、様々なサンプルを作成することで作成・性能評価を行うプロセスが確立できた。また、プラスチックシンチレータの素材樹脂の再検討を行い、以前の樹脂と比較して約2倍の発光量を得られるようになり、おおむね初年度の研究目標が達成された。 今回素材樹脂を検討し異なる材料に変更したことで作成プロセスも簡略化されたため、より安価に大型化出来る可能性も出てきた。 また、10cm角-2cm厚さのシンチレータ作成にも成功し、コバルト60線源を用いたγ線の測定にも成功し、発光量の増加によりγ線を用いたエネルギー較正をより精度よく行うことが出来るようになった。 樹脂の変更により発光量向上が得られたため、ガドリニウム含有型のシンチレータの性能も向上したが、ガドリニウムの含有による発光量の低下がみられるため、この点については継続して改善していく。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の樹脂選定などの検討によって、プラスチックシンチレータ自体の発光量を大きく向上させることができたが、ガドリニウムを添加することで発光量が減少する傾向が確認されている。次年度はガドリニウム薬剤の再選定を行い、より安定して発光量に影響しない試薬の使用を検討する。 またシンチレータの透明度も向上したため、透過率、長期安定性などプラスチックシンチレータの基本性能を引き続き評価するとともに、樹脂の最適化も引き続き行うことで、更なる発光量の向上も目指す。 さらに前年度において中型シンチレータの作成にも成功し、コバルト60線源を使用したγ線信号の測定を行い、コンプトンエッジの測定によってエネルギー較正も可能になったため、より大型のシンチレータを作成することで、ガドリニウムの添加による中性子捕獲信号の検出を行なっていく。特にAm/Be線源をニュートリノ擬似信号源として用いて、遅延同時計測法を用いて原子炉ニュートリノの擬似信号の検出を試みる。 その他、1トンサイズの大型検出器を作成した際のニュートリノ検出効率の評価を、シミュレーションを行って評価する。
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Causes of Carryover |
当該年度における助成金はおおむね予定通り使用してきた。企業側でシンチレータの作成を行うことを想定していたが、難しい状況が発生したため、大学研究室内でシンチレータを作成するための作成設備やシンチレータ材料を購入する費用として使用してきたが、振り込み手数料の有無等でごく少額が次年度への繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度において研究室における作成環境は整っており、次年度は主に大型化に向けたシンチレータ材料樹脂や、金型の購入によって前年度残額も含めて使用する計画である。 またシンチレータに含有するガドリニウムの選定を行う上で、様々な試薬を購入して性能評価を行うため、それらの試薬購入費用として使用する。 また、旅費として日本物理学会春季大会へ参加して報告することを予定しており、これらをまとめて次年度使用する計画である。
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Research Products
(5 results)