2015 Fiscal Year Research-status Report
Sスターの軌道解析によるいて座Aスターの自転運動の解明
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26800150
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Research Institution | Wakayama National College of Technology |
Principal Investigator |
孝森 洋介 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (30613153)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超大質量ブラックホール / ブラックホールスピン / Sスター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、銀河系中心にあるとされる大質量ブラックホール(いて座Aスター)の性質(質量・スピン)を探ることである。そのために、本研究では、銀河系中心領域を運動しているSスターに着目している。Sスターの運動から銀河系中心の情報を得るためには、実際の観測量と理論のパラメータを対応させる必要がある。様々なパラメータと観測量との比較は数値的に行う必要があり、本研究では、それを実行するためのプログラムの開発を行う。 昨年度は、よく知られているニュートン重力場中での質点の軌道を与えるプログラムの作成を行った。今年度は、ニュートン重力から一般相対論に変え、質点と光の軌道を与えるプログラムの開発を進めた。光の軌道は、放出する側(Sスター)と受け取る側(観測者)の位置が決まっており、固定点を2つもつ場合の運動方程式を解く必要がある。本研究では、緩和法と呼ばれる手法を用いて光の軌道を決定する数値プログラムの開発を進めた。数値プログラムの開発に加えて、星の軌道を決定する物理量の再考を行った。ニュートン重力では束縛された星の軌道は楕円になり、その軌道を決定する便利な物理量(例えば、離心率)が存在しそれは観測量とも比較しやすい。一方、一般相対性理論では、一般に軌道は閉じず(つまり楕円にならない)、ニュートン重力で用いられてきた軌道を決定する物理量の意味が失われてしまう。Sスターの観測からブラックホールの性質を探るためには、一般相対論的に星の軌道を表す物理量を用意しておくことが重要になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、昨年度行ったニュートン重力における星の軌道と星から出る光の軌道を計算するプログラムを、一般相対論へ拡張するプログラムを作成する予定であった。しかし、研究外のイベントが重なった影響で、本研究に従事する時間が予定よりとれず、数値プログラムとしては、光の軌道を与える数値プログラムの作成のみに留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、ニュートン重力における星と光の軌道を計算するプログラムの開発を行い、本年度は一般相対性理論での、光の軌道を与えるプログラムの開発を行った。現在作成が遅れている一般相対性理論での星の軌道を与える数値プログラムは、光の軌道を与えるプログラムとほぼ同等である。プログラム作成の遅れは、作成時間を十分確保すれば改善するため問題ない。数値プログラムの作成と並行して、星の軌道を決定する物理量を一般相対性理論でどのように与えるのが良いかも考えていく。
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Causes of Carryover |
進捗がやや遅れ、外部へ研究内容を発表する機会が予定より少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究のスピードを加速させ、外部への研究発表を行う機会を増やし情報発信を強化するために使用する。
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