2014 Fiscal Year Research-status Report
ゲルマニウム検出器用高速デジタル波形処理システムの開発
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26800152
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
細見 健二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究員 (40710380)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 波形読み出し / ゲルマニウム半導体検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究は、ゲルマニウム(Ge)半導体検出器の高速デジタル波形処理技術の開発を目的とする。その主な応用先は、J-PARCハドロン実験施設にて行う大強度中間子ビームを利用したハイパー核のガンマ線分光実験である。 開発の初段階として、5V/16bit 分解能、100MHzサンプリングの汎用ADC(アナログデジタル変換器)を用いたプロトタイプシステムを構築し、デジタル波形処理のための試験データを取得した。取得した波形データを解析した結果、60Co標準線源の1332keVのガンマ線に対して、解析速度を重視した方式で10keV(0.75%)、解析精度を重視した方式で6keV(0.45%)のエネルギー分解能を達成できることを確認した。Ge検出器固有のエネルギー分解能は1332keVのガンマ線に対して約2keV(0.15%)であるため、さらなる改良が必要であることが分かった。 改良策を探るため、増幅率の異なるプリアンプをもつGe検出器で同様の試験を行い、プリアンプの増幅率を高くすることでデジタル波形処理後のエネルギー分解能を改善できることを確認した。これまでの試験により、プリアンプ側の増幅率を100mV(出力電圧) / MeV(入射ガンマ線エネルギー) 程度に設定することで、目標とするGe検出器固有のエネルギー分解能を達成できることが試算された。 10月に行われた国内研究会において、当該研究に関する口頭発表を行い、回路開発に携わる研究者と議論を行った。その中で、今後の開発方針に対して数多くの知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに波形読み出し回路のプロトタイプシステムを構築し、Ge検出器の波形データを取得することができている。プロトタイプシステムによる性能評価結果は当初の予想よりもよいエネルギー分解能を示しておいる。これは波形のフィッティング解析によって、サンプリングADCの有効bit数が個々の時間サンプル単位で読み出すよりも多くなっているためであると考えている。また、Ge検出器固有のエネルギー分解能が達成できていない原因もプリアンプ側の増幅率が足りていないことで説明できるため、今後の改善策の見通しは立っている。 波形データの解析手法に関しても計画通り開発が進み、必要なプログラムの雛形を開発するこができた。今後は、テスト波形データをもとに解析パラメータのfine tuningを行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、増幅率を100mV(出力電圧) / MeV(入射ガンマ線エネルギー) 程度に設定したプリアンプにて波形データをプロトタイプシステムで取得し、性能評価を行う。また、すでに取得してある波形データをもとに解析プログラムの改良とパラメータの調整を行う。 上記と並行して、デジタル波形処理回路実機の設計製作を進める。実機の設計を進めるにあたって、KEK のエレクトロニ クスシステムグループを中心とする技術情報共有団体 Open-It (オープンソースコンソーシアム) にGe検出器の波形読み出しをテーマとしたプロジェクトを立ち上げる。 Ge検出器のエネルギー校正システムの開発も進める。エネルギー校正用システムは、Lu2SiO5(LSO)シンチレータとMPPCの組み合わせで作る。これは、LSOシンチレータ内に含まれる176Luのベータ崩壊をタグすることで、その娘核から放出される200keVと300keVのガンマ線に効率よくゲートをかけることができるものである。
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Research Products
(2 results)