2015 Fiscal Year Research-status Report
高輝度ハドロン加速器実験に用いる初段飛跡トリガーの開発
Project/Area Number |
26800156
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
中村 浩二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (00554479)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ATLAS / トリガー / 飛跡検出器 / 半導体検出器 / ハドロンコライダー |
Outline of Annual Research Achievements |
高輝度ハドロンコライダーに用いる飛跡検出器読み出しおよび飛跡トリガーの開発に関して以下のような研究を行い成果を得た。 1)高速読み出しASICに対応するDAQシステムの開発 : ATLAS実験では2026年より開始する高輝度LHC実験に向けてシリコン飛跡検出器のアップグレードの開発を行っている。高輝度運転かでの飛跡占有率の要求から現在使用されている読み出しASICは使用できず、新しく65nmプロセスのチップの開発を行っている。これらの信号を読み出し、飛跡トリガーに送るDAQボードの開発を始めている。読み出し速度は5Gbpsとはやく、通信および信号処理には高度な技術を要するため、KEK測定器開発室の助言をもらいながら進めている。具体的には汎用のFPGAボードを用いた10Gbpsまでの信号の通信が可能であることを確認、信号処理のアルゴリズムのFirmwareを現在開発中である。 2)ピクセル検出器を用いた磁場テスト : 前述したATLAS実験のアップグレード用に開発している検出器を用いた性能試験の一環で宇宙線を用いたトリガーシステムの開発および磁場中での性能検査を行った。また、磁場中での半導体検出器は生成した電子正孔ペアが移動する方向が電場方向からずれる現象(この角度をローレンツ角とよぶ)が知られていて、飛跡に随伴する信号を読み出したピクセル数の入射角度依存性から、ローレンツ角を測定することが可能である。実測に成功し、実測値がシミュレーションと一致していることまで考察できた。また、より複雑なトリガーシステムを実装するため、ピクセル検出器の2層目、3層目の間にタングステン製の板を挿入し、低運動量宇宙線(ミュー粒子)をとめることで、ミュー粒子の寿命を測定することもできた。この実験に関しては2016年度にも追実験を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展しているといえる。ハードウェア開発に関しては、トリガーシステムやDAQの開発が順調に進展していてFPGAプログラミングの知見も順調に蓄積してきた。ATLAS検出器でのトリガーシステムを実装する際のシミュレーションを行うことに関しては若干遅れ気味ではあるが、ハードウェアの開発からのインプットが必要であるため、そちらの開発を優先して進めてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で書いた1)に関してはこれから本格的に進めていく予定である。2)に関しては追試を行うが新しい開発は必要なく、必要量のデータの取得を目的とする。これに加えて若干遅れ気味であるATLAS検出器でのトリガーシステムのシミュレーションに関しても今後進展させていく予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度進んでいた研究計画が実験準備状況等の影響で遅れたため、繰上げ支給をお願いした分の約半分を2016年度にまわした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度当初の予定通り使用する。
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Research Products
(7 results)