2014 Fiscal Year Research-status Report
ガンマ線バーストジェット中を伝搬する相対論的輻射優勢衝撃波の理論研究
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26800159
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 裕貴 独立行政法人理化学研究所, 長瀧天体ビッグバン研究室, 特別研究員 (30434278)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 衝撃波 / ガンマ線バースト / 輻射輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、相対論的輻射優勢衝撃波の一次元定常解を構築するための計算コードの開発に取り組みました。具体的にはモンテ=カルロ手法を用いた輻射輸送計算を行う事によってプラズマと光子のエネルギー、運動量の交換を評価し、衝撃波の上流から下流に至るまでの全領域において、定常となるようなプラズマ及び光子の分布に反復法によって収束させるコードを作成しました。現時点のコード開発の達成度としては、衝撃波の伝搬速度のローレンツ因子が10以下の場合については、安定に定常解に収束させる事が可能である事を確かめました。本研究で得られた主な結果としては、衝撃波遷移領域を通過した光子は顕著な非熱的なエネルギー分布を示すという点です。特に、衝撃波上流のプラズマのエネルギー密度が光子に比べ卓越している場合は、光子の非熱的成分のエネルギー分布は衝撃波の伝搬速度にあまり依存しないという事が分かりました。
本研究は、ガンマ線バーストを引き起こしていると考えられている、相対論的ジェットの内部に生じる衝撃波が、そのガンマ線放射に与える影響を調べる事を目的としています。本研究から得られた得られた最も重要な示唆は、ガンマ線バーストの大きな特徴である非熱的スペクトルの起源が、ジェットの内部に普遍的に存在していると考えられている衝撃波によって自然に説明できるといった点です。これは、長年の謎となっているガンマ線バーストの放射機構を説明する有力なシナリオとなりえるといえます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではモンテ=カルロ法を用いた輻射輸送計算と反復法を組み合わせる事によって、相対論的衝撃波の定常解へと収束させるという手法を用いています。本研究を遂行する上で困難となる点は、限られた粒子数においても高精度で光子の非熱的なエネルギー分布を捉える事のできるモンテ=カルロ法の構築する事と、一次元定常解へと安定に収束させる事の出来る反復法の構築する事の二点です。最初の点においては、プラズマとの相互作用によって高エネルギーとなった粒子を分裂させるといった手法を用いる事により実現しました。反復法の構築に関しては、各ステップの輻射輸送計算から導かれる定常解からのズレから、定常解へと近づけるためのプラズマの速度分布の修正方法を発見する事により実現しました。よって、コード開発において最も困難である思われる点を克服しているため、本研究はおおむね順調に進展しているといえます。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点までにおけるコード開発は順調ですが、より高いローレンツ因子(10以上)の伝搬速度を持った衝撃波の定常解を適切に求めるためには、光子光子対消滅の影響を考慮する事が必要となってきます。現在の計算コードにはまだそれが取り入れられていないため、今後の方針としては、まず光子光子対消滅を適切にとらえる事のできるコードの開発を行います。それが、実現した後は、様々なローレンツ因子の場合の一次元定常衝撃波解の構築を行います。その後に応用として、衝撃波が光学的に厚い領域から薄い領域へと伝わっていった場合、光子がそのように衝撃波から解放されるかといった事を調べていく予定です。
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Causes of Carryover |
今年度は外部機関で使用できるハードディスクの容量が大幅に増大したため、当初の予想と比べ購入予定であったハードディスクが必要でなくなったため差額が生じました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の旅費の一部として使用する予定です。
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