2014 Fiscal Year Research-status Report
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26800168
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太野垣 健 京都大学, 化学研究所, 准教授 (80422327)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光物性 / 量子ドット / 半導体物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、量子ドットにおけるキャリア増幅過程のメカニズム解明に取り組むものである。具体的には、低バンドギャップエネルギーのゲルマニウム量子ドットにバンドギャップエネルギーの数倍以上の高エネルギーの光照射を行い、大きな運動エネルギーをもった電子正孔キャリアが生成された際に現れるキャリア増幅過程を発光または光電流をプローブに用いた評価によって検出し、キャリア増幅のメカニズム解明を目指す。この目標を達成するために、平成26年度は(1)インパクトイオン化の発現条件の解明に着手することを研究実施計画に記した。具体的には、(i)光励起キャリアの運動エネルギーを系統的に変化させるために、波長可変レーザー光源を用いた系統的に照射光エネルギーを掃引する測定系の構築、および照射光エネルギーの掃引範囲の高エネルギー化を行った。また、(ii)光電流および発光を用いた評価によって光励起キャリア数を調べるために、量子ドット試料の準備を進めた。光電流測定用にシリコンpn接合中のゲルマニウム量子ドットを作製した。また、発光測定用に、結晶シリコンにおける光吸収の影響を除去するために、酸化膜上薄膜結晶シリコンにゲルマニウム量子ドットの作製を行った。上記の試料を用いて光励起キャリア数を評価する実験を進めたが、光電流測定では十分な光電流が得られなかった。また、発光法においても、低エネルギーの光照射においては発光が得られるものの、高エネルギー光を照射した際には十分な発光強度が得られないといった問題点が生じた。高エネルギー光に対する表面反射の影響など、その原因の解明を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べた課題(1)インパクトイオン化の発現条件の解明について、測定装置の立ち上げ、試料の作製が順調に進行した一方で、H26年度中にはキャリア増殖現象を本試料で発現させることができなかった。従って本課題の達成度についての自己評価は「やや遅れている。」となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、研究計画書に記載した、(1)インパクトイオン化の発現条件の解明を進める。今後、表面での光学損失を低減するような反射防止膜を付加した試料を準備することで、高エネルギー光照射の効果を増大させる。また、キャリア増殖過程の逆過程であるオージェ再結合の発現の検証や、高バイアス電圧を印加することによるインパクトイオン化現象の検証など、より容易に発現が期待される現象に立ち返ってキャリア増殖現象の発現を探索する。さらに、(2) 量子ドットの電子状態に対するインパクトイオン化効率の依存性、および、(3) インパクトイオン化に対する非平衡キャリアのエネルギー緩和過程の影響について研究を進める。
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Causes of Carryover |
平成26年度に「直接経費次年度使用額」が生じたのは、インパクトイオン化の発現を確認するまでに至らなかったことが主原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に資金を持ち越し、平成27年度の予算と合わせ、インパクトイオン化の発現の確認とメカニズムの解明を進め、当該課題を達成することを目指す。
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