2016 Fiscal Year Research-status Report
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26800172
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大槻 純也 東北大学, 理学研究科, 助教 (60513877)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 超伝導 / 磁性 / 準結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、強相関電子系における磁性と超伝導が絡み合う現象を微視的理論によって明らかにするための新たな数値計算手法を開発すること、またその理論を応用して、強相関電子系の磁性と超伝導に関する未解明の現象を明らかにすることである。本年度の実績は以下の2つに分類される。 (1)量子モンテカルロ法などの虚時間形式に基づく数値計算における2つの問題の解決法を提案した。角度分解光電子分光で観測される一粒子励起スペクトルなどの計算に必要となる「解析接続」は、統計誤差のある場合に極めて不安定となる。そのため、信頼できるスペクトルを得ることが難しかった。本研究では「スパースモデリング」と呼ばれる最新の情報理論を応用して、数値誤差があっても安定してスペクトルが得られる手法を開発した。さらに、その詳細な解析から、虚時間データを表現する新しい基底を発見し、種々の動的相関関数を極めて効率よく表現できることを示した。この発見は、特に、多軌道系など多くの自由度を持つ系の数値計算におけるデータ量や計算コストの大幅な削減を可能とし、数値計算の適用範囲を大きく広げるものである。以上の成果は2篇の論文として投稿した。 (2)希土類元素を含む準結晶化合物において、量子臨界的な振る舞いが観測されている。強相関電子系における量子臨界現象は、通常は磁気秩序の消失と関連して観測されるが、準結晶化合物では磁気秩序が存在しないため、その起源が謎であった。本研究では、準結晶の磁気的性質を説明する新たな模型を提案し、それを動的平均場理論を用いた数値計算によって解析することにより、実験で観測されている量子臨界的な振る舞いを説明した。これは準結晶構造特有の機構であり、新たな視点を与える結果である。この成果はJournal of the Physical Society of Japan誌に速報論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は数値計算手法の開発において、2つの大きな進展があった。ひとつは新しい解析接続法の開発、ふたつめはデータ量と計算コストを大幅に削減する新しい基底の発見である。前者は一粒子励起スペクトルや磁気励起スペクトルなどの数値計算精度を向上するものであり、後者は多軌道系など複数の自由度を持つ系の数値計算を可能とするものである。これらの成果は、他分野の研究者の講演を聴講し、議論をした中から、新しく生まれた成果である。良く言えば予想外の成果である。よって、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで構築した数値計算手法を実際の強相関化合物に適用するための拡張を行う。具体的には、強相関電子系の磁性と超伝導を計算する動的平均場法およびデュアルフェルミオン法を多軌道系に拡張子し、さらに第一原理計算と組み合わせることにより化合物のエネルギーバンド構造を考慮に入れた計算を行えるようにする。また、本年度中の研究で得られた2つの新しい数値計算手法を組み込む。これにより、多軌道系の計算時間を飛躍的に短縮し、さらにスペクトルの計算精度を上昇させる。以上の拡張によって、実際の強相関化合物に即した磁性と超伝導の計算を目指す。
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Causes of Carryover |
最終年度での成果発表に向けて、本年度は国際会議への参加を積極的には行わず、なるべく研究時間を確保するように努めた。そのため、当初の計画よりも旅費が少なく抑えられた。その分、最終年度は積極的に国内外の会議に参加する計画である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度である次年度は、国内外の会議や研究会に積極的に参加し、成果発表を行う。国際的なものとして、具体的には、8月にスウェーデンで開催されるInternational Conference on Low Temperature Physicsに参加し成果発表をする。同時に、ウィーン工科大学やアウグスブルグ大学などを訪問し、セミナーを行う計画である。また、9月にドレスデン(ドイツ)で開催される動的平均場理論関連の国際研究会に参加し、成果発表および関連研究者と議論を行う。その他、3月に開催されるアメリカ物理学会への参加も計画している。
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] 多体効果の最前線2016
Author(s)
大槻純也
Organizer
J-Physics 若手夏の学校
Place of Presentation
高野山大学(和歌山県伊都郡)
Year and Date
2016-08-08 – 2016-08-12
Invited
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