2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26800176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 誠 東京大学, 物性研究所, 助教 (40379475)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁性 / 量子スピン系 / 強磁場 / 磁気共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
幾何学的フラストレーションを有する量子スピン系において、強磁場中で現れると予想されている磁化プラトーやスピンネマティック状態等の新奇な量子相を調べるために、候補物質ボルボサイトおよびNaCuMoO4(OH)の核磁気共鳴(NMR)測定を行った。ボルボサイトは28 T以上で1/3磁化プラトー、その直前の磁場領域(23-28 T)で新奇磁気相が現れる。この相がスピンネマティック相である可能性が指摘されている。この相の情報を得るために東北大金属材料研究所のハイブリッドマグネットで18~24 Tの磁場領域のNMR測定を行った。特に最終年度にはヘリウム3を用いた0.6 Kまでの測定を行った。スペクトルの温度依存性から高磁場相の相境界を決定した。また、核磁気緩和率の測定を行い、18-24 Tの磁場領域においてべき的な温度依存性を見出した。22 T以上では正のべきから負のべきに変わり、新奇相を特徴付ける温度依存性が得られた。他方、一次元フラストレート鎖物質NaCuMoO4(OH)においては、磁気相転移温度が1 K以下と低く、実際どのような磁気状態が実現しているか明らかではなかった。本研究では、希釈冷凍機内でピエゾモーターにより試料の角度を制御し、精密なNMR測定を行った。スペクトルの解析から、1.5 T以下ではスパイラル、2 T以上ではスピン密度波秩序が実現していることを明らかにした。このことから、NaCuMoO4(OH)は最近接が強磁性的、次近接が反強磁性的な交換相互作用で競合する一次元フラストレート鎖物質であることが確認された。さらに、2 T以上の磁場領域では、核磁気緩和率の温度依存性から、磁場印可方向に平行な縦の磁気ゆらぎは転移温度に向かって発散的振る舞い、垂直な横ゆらぎはギャップ的振る舞いを示すことを見出した。この異方的磁気ゆらぎは2マグノンの束縛状態の形成を示すものである。
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[Journal Article] One-Third Magnetization Plateau with a Preceding Novel Phase in Volborthite2015
Author(s)
H. Ishikawa, M. Yoshida, K. Nawa, M. Jeong, S. Kramer, M. Horvatic, C. Berthier, M. Takigawa, M. Akaki, A. Miyake, M. Tokunaga, K. Kindo, J. Yamaura, Y. Okamoto, and Z. Hiroi
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Journal Title
PHYSICAL REVIEW LETTERS
Volume: 114
Pages: 227202-1-5
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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