2014 Fiscal Year Research-status Report
鉄系超伝導体におけるマルチオービタルを利用した新規高温超伝導体設計指針の提案
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26800182
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
飯村 壮史 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (80717934)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄系超伝導体は、銅酸化物系に次ぐ高いTcを有する高温超伝導体物質群である。特に1111系と呼ばれるLnFeAsO系は鉄系超伝導体中で最も高いTcを示すため、その超伝導発現機構には大きな注目が集まっている。母物質と呼ばれるLnFeAsOは低温で反強磁性秩序を示す。これらをキャリアドーピングによって抑制することで超伝導が発現する。しかし、1111系は、その発見当初から有効なキャリアドーピング手法が無く、本系の注目度とは裏腹に、その物性はほとんど未解明のままであった。申請者らは、1111系の酸素サイトに水素陰イオンを置換することで多量の電子を注入しその物性の変化を追っている。これまでLn=Laの系において、電子ドーピングが誘起する高温超伝導相及び磁気秩序相を発見し、これらの電子ドーピング誘起相が1111系の高Tc超伝導と深い関係にあるのではないかと考えた。本研究では、二つの磁性相を持つ系を拡張し、それらと高温超伝導相との関係を明らかにすることを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度から一山超伝導相を示す鉄系化合物の合成および物性評価を行ってきた。La系と同様にSm、Tb系においても高ドーピング域に秩序相が存在することを電気抵抗、磁化率測定から確認することができた。現在はX線、中性子回折法を用いてその具体的な秩序構造の決定に取り組んでいる。これらの成果は平成26年度の日本物理学会で二度発表した。近々論文にまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、La系と同様にSm、Tb系においても高ドーピング域試料の中性子回折を行い、より詳細な秩序構造を決定し、その論文化に注力する。また、La系の電子構造の解明にも取り組む。
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Causes of Carryover |
平成26年度にサマリウムの154同位体を購入予定であったが、所属研究室の余り分を用いて作製した試料量で今年度の中性子測定のビームタイムが終わってしまったため、その分の金額が余ってしまった。この次年度使用額は当初の予定から一年ずれ、今年度27年に同項目にて使用予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主要な用途はサマリウム154酸化物の購入であり、10gで200万円相当するため、容量は多少減らす可能性がある。 残った予算は国際会議への旅費や計算機の購入を考えている。
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