2015 Fiscal Year Research-status Report
新物質開発及び精密熱量測定から切り開く乱れに強い異方的超伝導の物理
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26800183
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
加瀬 直樹 新潟大学, 自然科学系, 助教 (10613630)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超伝導 / 比熱 / 強相関 / 極低温 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下のような進展が見られた。 (1) Sc5Ir6Sn18がこれまで報告されていたTc = 1.1 Kではなく、Tc = 2.6 Kでの超伝導体であることを見いだすことに成功した。この超伝導体の超伝導状態を調べる際に、よりバックグラウンドの小さな比熱セルが必要となり、サンプルステージを排除し温度計とヒーターのみで構成される比熱セルを開発した。バックグラウンドが0.3 Kで1 nJ/K2程度となり、極めて高い精度で比熱測定が可能となった。またこれらの比熱測定は、絶対値の精度が信頼できる緩和法で測定が可能である。
(2) 海外のグループと共同研究を行い、本研究の対象物質であるR5Rh6Sn18 (R = Sc, Y, Lu)のミュオン測定を行った結果、時間反転対称性の破れが観測された。今後、超伝導対称性を議論する上で重要な情報である。結果の一部はSci. Rep.誌に報告した。
(3) 新たな超伝導体として、TiIrSi (Tc = 1.4 K)、SrPd2Sb2 (Tc = 1.95, 0.6 K)、Y6Tr4Al43 (Tr = Nb, Mo, Ta) (Tc ~ 0.6 K)を発見することに成功した。それぞれ各種物性測定から、通常のBCS理論で説明可能な超伝導であると考えられる。結果の詳細はSupercond. Sci. Tecnol.誌及びJ. Phys. Soc. Jpn誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R5Rh6Sn18の超伝導対称性を理解する上で非常に有益な情報をミュオン測定から得ることに成功した。また新たな超伝導体を3種類、計6個発見することに成功した。さらに、これまで測定が困難であった超伝導体の比熱測定が可能となり新たな研究の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
非常に高精度な比熱測定装置の開発に成功したので、これを用いてこれまで比熱が小さすぎて測定が不可能であった物質の比熱測定を行う。また、熱伝導率測定、ミュオン測定などを通して、R5Tr6Sn18の超伝導ギャップ構造をより詳細に明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験装置のトラブル等で液体Heを使用した実験が想定よりも少なかったことが原因である。また、当初予定していたスペインでの国際学会への参加を、諸事情により取りやめたことも原因として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
寒剤として使用する液体Heの購入に使用する。また申請者及び指導学生の日本物理学会、国際学会の旅費に使用する。
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Research Products
(41 results)