2014 Fiscal Year Research-status Report
超音波によるマルチバンド超伝導体の電気四極子効果の解明
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26800184
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
赤津 光洋 新潟大学, 自然科学系, 助教 (10431876)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マルチバンド超伝導 / 鉄系高温超伝導 / 電気四極子 / 超音波計測 / 弾性定数 / 超音波吸収係数 / 一軸圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
縮退したマルチバンド構造を持つ鉄系超伝導体Ba(Fe1-xCox)2As2とA-15超伝導体V3Siは、横波超音波の弾性定数が巨大なソフト化を示す。これは、超伝導の発現機構にd電子軌道由来の縮退したバンドが持つ電気四極子が重要な役割を果たしていると考えられる。本研究課題では、電気四極子の超伝導や巨大な弾性ソフト化への寄与を明らかにしマルチバンド超伝導体における四極子効果を解明するため、常圧下でのBa(Fe1-xCox)2As2の超音波吸収係数測定及び解析と一軸圧下超音波計測用プローブの開発を行った。 巨大なソフト化を示すC66モードを成分として含む縦波の超音波吸収係数であるaL[110]は、超伝導だけを示すx = 0.1では、超伝導転移温度23K に向かって急激に増大し、周波数依存性も示した。一方、ソフト化を示さない(C11-C12)/2モードの超音波吸収係数aTは、ほとんど温度依存性も周波数依存性も示さなかった。構造相転移と超伝導を示すx = 0.07では、構造相転移温度60 Kに向かってaL[110]は猛烈に増大し、転移点近傍では測定ができないほどの超音波吸収を示した。また、x = 0.1と同様に、超伝導転移 (23 K) でaL[110]はピークと周波数依存性を示した。以上の結果を解析した結果、超伝導転移と構造相転移で緩和時間が急激に増大しており、臨界緩和現象が現れていることが分かった。これは、転移点で四極子Ov’の揺らぎが増大していることを示唆しており、構造相転移では平均場理論と合うことから、四極子Ov’が秩序変数だと考えられる。一方、超伝導転移では緩和時間の変化が平均場理論からずれていることが分かった。 一軸圧下超音波計測用プローブの開発では、フォースセンサーで試料にかかる力を監視し調節することで圧力を一定に保つシステムの開発を進め、設計まで完了させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、超音波吸収係数の精密測定と一軸圧下での弾性定数の測定を行うことによって、巨大な弾性定数のソフト化を示すマルチバンド超伝導体である鉄系超伝導体Ba(Fe1-xCox)2As2とA-15超伝導体V3Siにおける四極子効果を解明することが目的である。 一軸圧下で実験を行うための一軸圧下超音波計測用プローブの開発については、仕様を策定しフォースセンサー等の選定及び設計がほぼ完了した。急ぎ製作を完了させ、一軸圧下での測定を推進する。 常圧下でBa(Fe1-xCox)2As2の構造相転移と超伝導を示すx = 0.07の試料と超伝導だけを示すx = 0.1の超音波吸収係数の精密測定を行い、構造相転移と超伝導転移で超音波吸収係数が急激に増大し、周波数依存性があることを示した。解析を行い、電気四極子Ov’の揺らぎが増大していることを明らかにした。V3Siでは構造相転移を示す試料と構造相転移を示さない試料のそれぞれで超音波吸収係数測定を行い、解析・データの比較等を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
A-15超伝導体V3Siは、測定するごとに試料の劣化が進み、データの再現性が悪いことが分かった。試料をアニールすることである程度結晶性が改善することが分かったため、アニールを行い、常圧下での超音波吸収係数の精密測定を引き続き行い、既に得られたデータと共に比較・解析を行う。 一軸圧下超音波計測用プローブの開発では、設計までほぼ完了したので、急ぎ製作を行う。完成後、V3Si及び鉄系超伝導体Ba(Fe1-xCox)2As2において、一軸圧下超音波計測を行い、相転移温度と巨大な弾性定数のソフト化の一軸圧力依存性を明らかにする。 これまで得られた結果を論文としてまとめ雑誌へ投稿し、日本物理学会で発表を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画では、一軸圧下超音波計測用プローブの仕様策定、設計、製作発注まで終わらせる予定であったが、仕様策定と設計に時間がかかり、プローブの製作発注できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
一軸圧下超音波計測用プローブの設計をほぼ完了したので、急ぎ製作発注を行う。
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