2014 Fiscal Year Research-status Report
超音波によるプラセオジム化合物の新奇磁場誘起量子相転移の起源解明
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26800189
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石井 勲 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (20444713)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非磁性二重項 / 電気四極子 / 磁場誘起相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,非磁性基底二重項をもつPrT2Zn20(T=Ir, Rh)において発見した,これまでに例のない非磁性二重項の電気四極子に起因する新奇磁場誘起量子相転移の起源解明を進める.そこで,電気四極子の感受率である超音波実験(弾性率測定)や熱膨張率測定などを駆使し,多角的な観点から起源解明を行う.研究推進の為に,本研究専用の高分解能弾性率測定装置を立ち上げ,極低温での実験を行う.この研究により,f電子系における多極子物性の新たなページが期待される. 平成26年度は実施計画の通り,まずデジタルオシロスコープ,ボックスカー積分器,フェイズディテクター等の設備備品や,消耗品を購入して本研究専用の超音波実験装置を立ち上げた.また,PrT2Zn20の磁場方向[100]において弾性率(C11-C12)/2とC11の詳細な温度依存性,磁場依存性測定を行った.測定は約20mKまで行った. その結果,両物質の磁場依存性において,両弾性率共に磁場誘起相転移点で明確なピークを示した.非磁性基底二重項がもつ電気四極子に対応する(C11-C12)/2で弾性異常が見られることから,電気四極子の関与が考えられる.両弾性率から見積もった体積弾性率でも異常がみられ,転移点での体積歪みの発生が考えられる.また,極低温ではダブルピークがみられ,極低温での新たな相境界を明らかにした.測定温度の上昇と共に両弾性率のピークはブロードになり,1 K以上では不明瞭になったことから,相境界のエンドポイントが存在すると考えられる.以上の結果から,磁場方向[100]の詳細な磁場-温度相図を明らかにした. 一方,磁場誘起相転移近傍の両弾性率の温度依存性においては,零磁場よりも弾性ソフト化が増大し,かつ絶対零度に向かってソフト化し続けており,量子相転移の可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画の通りに研究は進んでいる.具体的には,必要な設備備品等を購入し,本研究専用の超音波実験装置を立ち上げた.研究対象物質PrT2Zn20の磁場方向[100]の詳細な弾性率測定を行った.熱膨張率測定治具は設計中である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の通り,磁場誘起相転移がみられる他の磁場方向([110]など)の詳細な超音波実験を行う.熱膨張率測定治具を作成し,熱膨張測定を行う.磁場方向[100]の測定結果と合わせて新奇磁場誘起量子相転移の起源解明を目指す.研究成果は学会発表を行い,学術論文としてまとめる.
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Causes of Carryover |
平成26年度に使用可能な直接経費の範囲内で,研究の遂行に必要な設備備品,消耗品は購入し,学会での研究発表も行った.上記必要経費の節約に努めた結果,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の予算配分依頼を行っている物品費,および旅費と合わせて使用する.
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Research Products
(13 results)