2014 Fiscal Year Research-status Report
希土類化合物における圧力誘起絶縁体-金属転移現象の微視的研究
Project/Area Number |
26800193
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小山 岳秀 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (30397666)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 希土類化合物 / 金属-絶縁体転移 / 核磁気共鳴 / 強相関電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類化合物における絶縁体ー金属転移の研究はサマリウム(Sm)化合物を中心に行われている。本研究では加圧することで上記の転移を示すSmS、SmB6に着目し、圧力下核磁気共鳴(NMR)実験により転移前後の構造や電子状態について微視的な観測を行った。 SmSが絶縁体ー金属転移を示すことが発見されてから50年近くたつが、この物質においてNMR実験はなされていなかった。これは通常用いられるSm、硫黄(S)元素はともにNMR実験に適した原子核ではないためである。そこで、本研究ではNMR実験可能な硫黄濃縮同位体を用いることで、初めてSmSにおけるNMR実験を成功させた。 常圧においてはSmイオンが2価状態をとり、非磁性絶縁体あることをミクロレベルでも検証できた。さらに転移圧力(0.7 GPa)以上では観測した物理量の大きさが常圧に比べて大きく変わっており、電子状態が劇的に変化していることがわかった。このときSmイオンが中間価数状態にあること、低温は非磁性状態である結果を得た。この圧力領域でSmSが半導体か金属状態なのかについての知見を得るため核スピン-格子緩和率を測定した。これにより40 K程度のギャップを観測し、この大きさは圧力印加とともに減少することがわかった。これがどのようなギャップ(エネルギーギャップ、またはなんらかの磁気的なギャップ)なのかについては、今後異なる圧力で測定することで解明できると考えている。本研究は今までSmSの研究でほとんどなかった微視的な視点からのギャプ、磁性に関する情報を初めて得たことで意義がある。今後、電気抵抗や比熱などの物理量を合わせて考察することで、転移前後の電子状態が明らかになると期待される。 絶縁体であるSmB6については試料形状を単結晶に変更することで測定の精度を高め、圧力下での測定を進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一段階では自然界に0.76%しか存在しない核磁気共鳴(NMR)実験可能な硫黄同位体33Sを98%に濃縮した硫黄を用いた硫化サマリウム(SmS)を作製し、それを用いて常圧でNMR信号を探索した。固体物理学の研究で硫黄核のNMR実験の報告はこれまでほとんどないため、測定条件の調整に時間を要したが、NMR信号の観測に成功した。NMR信号の強度は試料の量が多いほど強いため、今回、比較的多くの量を用意できたことが信号を観測できた理由の一つである。 第二段階では圧力下の測定を行った。圧力セル内の試料空間に制限があるため、実際に実験に用いる試料が少なくなり、信号強度が弱くなる。これを補うために、ノイズレベルの少ない液体窒素冷却高周波広帯域プリアンプを購入した。また、現有の超伝導磁石の空間を有効に利用するため、通常とは異なる圧力セル内でのコイルの設定により、試料の量の確保に努めた。これらのことが実験を円滑に進める上で有効だったと考えている。また、Smと電子状態が似たEu化合物の研究も解析を進めるうえで比較として役に立った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で測定を行った圧力領域をさらに高圧に拡大し、詳細な測定を行うとともに、2GPa以上で現れると報告されている磁気秩序相の検証、磁気構造の特定を行う予定である。そのため、さらに高圧に耐える圧力セルの準備、調整を行う。さらに試料空間が小さくなることで信号強度の減少が予想されるが、初年度購入したプレアンプを用いることで強度の増幅を図り研究を遂行したい。初年度測定した圧力領域の実験でギャップの存在を見出した。これが何に起因するギャップなのかをさらに高圧領域の実験をすることで答えが出せると考えている。SmB6については現在、圧力制御の課題があり初年度の目標圧力に達していないが、調整を続けることで目標とする磁気秩序相の研究を達成したい。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] NMR studies of ordered structures and valence states in the successive valence-transition system EuPtP2014
Author(s)
T. Mito, K. Nishitani, T. Koyama, H. Muta, T. Maruyama, G. Pristas, K. Ueda, T. Kohara, A. Mitsuda, M. Sugishima, H. Wada
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 90
Pages: 195106
DOI
Peer Reviewed
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