2015 Fiscal Year Annual Research Report
不均一性・ランダム性の無いナノスケール中ヘリウム4超流動の動的応答による研究
Project/Area Number |
26800194
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村川 智 東京大学, 低温センター, 准教授 (90432004)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 超流動 / 量子渦 / 量子乱流 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノメートルサイズ中の超流動ヘリウム4の流れの性質を研究するために、10nm程度の細孔を持つ試料板を振動ワイヤー法により振動させる実験を行った。試料版はまっすぐの孔が作成できるポーラスアルミナの表面に金蒸着させて作成した。この孔にはランダム性や不均一性は無いと考えている。測定は振動の共鳴周波数付近で周波数をスイープさせ、その共鳴曲線の形を解析した。通常の粘性流体中においてはこの共鳴曲線はローレンツ型になり、ピークの高さがエネルギー散逸を示すことになる。対照用の試料として、同様の大きさで孔の空いていない板も準備し同様の実験を行い、孔の有無が結果にどのように影響が出るかを調べた。 超流動転移温度以下で、細孔を含む板をある一定速度以上で振動させると、共鳴ピーク高さが低く、非対称な共鳴曲線が得られた。この異常は転移温度以上の常流動状態や細孔を含まない板を振動させて得られた共鳴曲線には現れなかった。ピーク高さが低いことはエネルギー散逸が増大していることを反映し、粘性が零と考えられている超流動状態においても何らかのエネルギー散逸が存在していることを示している。また、共鳴曲線がローレンツ型からずれることは、細孔中を流れる超流体は、よく見られる速度に粘性が比例するニュートン流体ではなく、それ以外のエネルギー散逸が存在することを示しており、非常に興味深い結果である。このエネルギー散逸は超流動体中の量子渦糸乱流との関連が示唆されている。 振動速度が小さいときは共鳴曲線の非対称性は現れなかったが、エネルギー散逸の増大は観測された。このエネルギー散逸の増大は量子渦糸の熱活性化モデルで説明できるものであり、このナノポアアレイ中の流れには低速度領域から高速度領域まで量子渦糸が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
|