2015 Fiscal Year Research-status Report
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26800200
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 大輔 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (80603505)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 物性理論 / 磁性 / フラストレーション / 光格子 / 冷却原子 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性体において微視的なスピン間に反強磁性の相互作用が働いている場合、隣り合うスピン 同士が反対を向きたがる。その結果、正方格子や立方格子のような格子結晶中では、スピンが互い違いに向いた反強磁性秩序が安定化する。一方で、格子の形が三角格子やカゴメ格子のように、三角形のユニットから構成されている場合、スピンがうまく互い違いに並ぶことができない。これを幾何学的なフラストレーションがあるという。 昨年度に引き続き、三角格子反強磁性体におけるフラストレーションと量子揺らぎ、強磁場の複合的な影響により出現する新たな相転移現象に関して詳しく調べた。1000個を超える膨大なスピンを扱い、模型を厳密に対角化することで有限系の固有状態がどのような対称性を持っているかを明らかにした。熱力学極限でマグノンが2つの異なる波数を持ってBose-Einstein凝縮(BEC)する「ダブルBEC」状態が現れる場合、有限系では最低エネルギー固有状態だけではなく幾つかの励起状態まで調べる必要がある。また、ダブルBEC状態の2つの凝縮体間の相対位相を周期境界条件での厳密対角化から決定することは、原理的に困難であるという知見を得た。 並行して、光格子中に充填した2種Bose原子混合気体の系を調べた。近年、アメリカの実験グループによって疑似的なスピン-軌道相互作用を導入することができるようになったこの実験系は、ダブルBEC状態が形成される可能性がある点で、上記の磁性体研究と数学的な共通性がある。ダブルBEC、シングルBEC間の相転移やMott絶縁体転移を含めた相図を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的のうち「フラストレート磁性体の新たな量子相転移現象の開拓と理解」に関しては前年度までの計画であったが、さらに興味深い新たな研究テーマが見つかったため本年度も継続して研究を行った。それに伴い、本年度の課題「冷却原子気体で生まれる新しいフラストレート系の研究」を一部次年度以降の研究として再計画した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、「研究実績の概要」に記載した本年度の研究に関して成果をまとめる。特にフラストレート磁性体模型に対する厳密対角化による研究は、本年度の知見を活かし、周期境界条件ではなく開境界条件化での計算を試行する。また、2種混合Bose気体に関する研究は、我々の理論模型に対応した実験系の作成が現在計画されており、実験グループと連携した詳細な研究、成果発信を目指す。
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Causes of Carryover |
支出の多い遠方での国際会議開催が少なく、また、昨年度からの持ち越し額が多かったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の交付額と合わせて、国際会議出張および数値計算用コンピュータの購入費として支出を行う。
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Research Products
(6 results)