2014 Fiscal Year Research-status Report
帰納法アプローチによるシミュレーションデータからの物性予測と解釈
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26800203
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Research Institution | Yamanashi Eiwa College |
Principal Investigator |
杉山 歩 山梨英和大学, 人間文化学部, 准教授 (20586606)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / マテリアルズ・インフォマティクス / データマイニング / 物性予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「マテリアルズ・インフォマティクス」と呼ばれる情報学による材料科学の推進を図ることを目的とした材料科学と情報科学の融合研究である。本研究ではこれまでの先行研究をもとに、合金、酸化物の結経構造の物性予測の方法論を確立する事を目的とし、データベースの構築と予測手法の提案を行う。 先ずデータベースの構築については密度汎関数理論に基づいた第一原理計算による物性計算の結果と広く公開されている物性データを使用したデータベースの構築を行う。また予測手法はデータマイニングの方法論を導入し、大量のデータから精度良く物性を予測する事、さらに予測結果から新規の知識獲得を目標としている。 2014年度は研究初年度であることから、対象となる系の選定と、データベースの基となるデータの第一原理計算による生成、データ整形を中心に行い、自明な物性特徴の予測を行う事を予定とした。このうち対象となる系の選定ではビスマス・ニオブ酸化物(BNO)系を中心とした酸化物系を対象に決定した。また構造は半導体材料の生成プロセスの中間状態でみられるパイロクロア構造とし、Dmol3を用いた計算によりデータベースに必要な物性値の計算を行った。マテリアルズ・インフォマティクスを始め、機械学習・データマイニングにおいて最も重要なプロセスが前処理としての特徴空間の設計である。本研究では必要とされる特徴空間としては最もシンプルなものでは結合距離や電荷などを採用した。また、BNO系の実験研究者との議論からパイロクロア構造の原子間にトラップされている酸素・窒素等の影響を予測する事が意義深いとの知見を得、BNO系パイロクロア構造に原子をトラップした構造の計算を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年11月の本研究課題申請時には北陸先端科学技術大学院大学に所属し、大学の資源を利用し研究を遂行する予定であったが、2014年4月より現所属の山梨英和大学に赴任し、研究環境が大きく変化した為に研究が遅れている。具体的には第一原理計算を行う大型計算機の設置とデータを格納するデータベースサーバの設置を行う必要があった。この問題解決の為に当初は学内のみで第一原理計算用の計算サーバの導入も検討したが、今年度研究費のみでのサーバ構築は不可能の為、学外の計算資源の利用によりこの問題を解決し、現在は計算機環境の問題は解決済みである。 実際の研究課題は「対象となる系の選定」は既に実施済みであり、ビスマス・ニオブ酸化物(BNO)系を中心とした酸化物系を対象に第一原理計算とデータ収集は実施済みである。 冒頭に説明した理由により、当初の予定通り計算を進める事が出来ず進捗が遅れた為、実際のデータマイニングによる物性予測は2014年度中に実施する事が出来なかった。2015年度中には研究計画書に提案した通りの進捗へ戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は2014年度で計算を行ったBNO系パイロクロア構造の計算結果によるデータベースからの物性予測を行う。予測モデルとして様々な既存のモデルがあるが、本研究では予測対象とパラメータ間の関係性の解釈が容易であり、グラフ化も適用しやすいという理由から線形回帰モデルによる予測を行う。現在の処、L1型正則化線形回帰手法であるLeast absolute shrinkage and selection operator(Lasso)を用いて計算を行う予定である。本計算により、融点等の基礎的な構造安定性に関する予測を行う予定である。 また、データベースは未完成で有るため、継続的に第一原理計算を進め、データベースの内容を充実させていく予定である。追加するデータは2014年度に実験研究者との議論で提案された酸素・窒素等の原子を付加した形の構造に関するデータ、また汎関数・基底関数等の計算条件に関する考察を行った上でより良い精度での予測が可能となるデータにデータベースを逐次更新していく予定である。 また、2015年12月に開催される国際会議「THE INTERNATIONAL CHEMICAL CONGRESS OF PACIFIC BASIN SOCIETIES 2015」にて研究成果の発表を行う予定である(発表登録済み)。その他に2015年9月には「分子科学総合討論会2015」において研究成果の発表を行う予定である。
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