2015 Fiscal Year Research-status Report
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26800204
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
秋元 琢磨 慶應義塾大学, 理工学研究科, 准教授 (30454044)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異常拡散 / エルゴード性 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内のたんぱく質や冷却された原子の運動では、エネルギーの貯蔵時間とそれより駆動された運動には相関があると考えられている。本研究では、貯蔵されたエネルギーによって駆動されて拡散する現象の数理的な解明を目的とし、その応用として、地震や自己駆動ゲル等の実際の現象のダイナミクスの解明を目指している。 平成27年度では、熱的に駆動された拡散過程ではあるが、その拡散係数が非熱的に変動する拡散過程(拡散係数が時間的に揺らぐランジュバン方程式)を提案し、時間平均で定義された平均2乗変位(TAMSD)の揺らぎの統計法則を明らかにした。このモデルは、からみあい高分子を記述するレプテーションモデルにおける高分子の重心の運動方程式となっている。さらに、過冷却液体の1分子の運動、膜たんぱく質の重心の運動などの内部自由度を持つ粒子の拡散や細胞内のような環境が時間的に変化するような系における粒子の運動にも応用でき、その応用範囲は広範囲にわたっている。このモデルにおいて、TAMSDの相対標準偏差(RSD)を用いて、その揺らぎを特徴付けた。その結果、観測時間が系の典型的な緩和時間より小さい場合には、揺らぎはほとんど減衰しないことがわかった。この事は、同じ実験環境では同じ結果を与えるという再現性の欠如を意味している。一方、この緩和時間より十分大きい観測時間では揺らぎは速やかに減衰し再現性が回復することがわかった。この成果はPhys. Rev. E 92, 032140 (2015)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非熱的な拡散過程の数理に関しては、おおむね順調に進んでいるが、自己駆動ゲルの解析が順調に進んでいない状況である。今後、実験データを整理し、理論モデルとの比較を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで進めてきた理論モデルをより実際の現象に適したものへ改良する。まず初めに拡散係数が揺らぐランジュバン方程式において、拡散係数の揺らぎを待ち時間とカップルさせたモデル(Annealed transit time model: ATTM)を考える。このモデルにおける時間平均により定義された平均2乗変位の再現性について解析する。そして、実験データとの比較を行う予定である。
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Research Products
(9 results)