2014 Fiscal Year Research-status Report
リニアトラップされた2種イオンの数個レベルでの原子数制御および配列操作
Project/Area Number |
26800218
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
大坪 望 独立行政法人情報通信研究機構, 電磁波計測研究所時空標準研究室, 研究員 (60710598)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | イオントラップ / 周波数標準 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、複数のイオン種を同時にトラップするイオントラップ装置を必要とする。今年度は、周波数標準の実現を念頭に置いた、イオンのLamb-Dicke状態での閉じ込めが可能なリニアトラップ電極を開発した。開発した電極を実際に真空装置に設置し駆動させ、Ca+イオンとIn+イオンのトラップをそれぞれ確認した。新たに開発したトラップ装置にて、電極に印加する電圧に変調を加えることでCa+イオンとIn+イオンの配列制御を実現した。 また、本研究の目的のひとつであるAl+のイオントラップを行うため、イオンの効率的な生成を行うためのレーザー光イオン化のための、波長394nmレーザー光源開発を行った。開発したのはLittrowタイプの外部共振器型半導体レーザーで、原子のイオン化には十分な10mWの出力を得ることができた。イオン化の起きる遷移波長を確認するため、真空装置内にAl原子ガスを噴流させる原子オーブンを設置し、原子蛍光の観測を試みたが、現在までのところ吸収線は観測されていない。Alの波長394nm遷移は閉じた遷移構造を持たず、レーザー光を吸収しない別の状態に落ち込んでしまうため、今後はリポンプ光の導入等を検討しつつ、遷移波長の確認およびイオントラップへの閉じ込めを目指す。 また、CaイオンとInイオンを用いた配列制御について、ワシントンDCで開かれたThe 24th International Conference on Atomic Physicにおいて、実験結果や周波数標準への応用を含めて報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トラップ電極・真空装置などの開発は年度内に達成することができた。しかし、新たに導入を予定しているAl+イオンについては、年度内の目標であるトラップの確認までは至らず、そのためのイオン化用レーザー光源開発までに留まっている。原子の光イオン化を行う際は、原子の遷移波長を確認しておかなければならないが、閉じた遷移ではないAlの波長394nm遷移は、蛍光による遷移線の確認が困難で、リポンプ光の導入など当初想定していなかった手順が必要となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画していた配列制御の研究に入る前に、In+イオンおよびAl+イオンの光イオン化についての研究を検討している。これらはイオン光周波数標準において重要なイオン種であるが、これらのレーザーを用いた光イオン化についてまとめられた文献はない。これらのイオン種は、基底準位から閉じた状態への光遷移が存在せず、リポンプ光を用いることで生成効率が上がることが期待される。イオン化効率を上げることで、ロード時のオーブン温度を下げ真空への影響を抑えることができる。特に、本研究のように共同冷却を行うため冷却イオンを先にロードする場合、それらのイオンをオーブンから出るガスとの衝突により損なう、もしくは不要なイオンをロードしてしまうことを抑えるため、効率的なイオン化の研究はイオン個数制御の点で重要な意味を持つと考えている。 安定なロード方法を確立した後、予定していた通りの配列制御の実験を行う。はじめに2つのCa+イオンと1つのIn+イオンで配列制御を利用した時計周波数計測を行い、その後より多数個のイオンでの配列制御を行うことを計画している。
|
Causes of Carryover |
予算を費やす予定であったAlのイオン化光源開発について、申請者が所属するグループが所有していた資産を転用して活用することで、その大部分を浮かせることができた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当所予定していなかった、InおよびAlイオンのリポンプ光の光源開発のための、レーザーダイオード、ドライバー類、オプティクス類の購入費として使用する。
|
Research Products
(1 results)