2015 Fiscal Year Research-status Report
肝疾患サンプルを用いた肝細胞の細胞極性の数理的解明
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26800225
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
昌子 浩登 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00378936)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 形態形成 / チューリングパターン |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓の微細構造をみてみると、各肝細胞が血管系である類洞と毛細胆管に接した3次元特有の周期構造である3次元共連結構造を取っている。そのため、その数理的な性質を捉えるためには、3次元空間での構造解析が必要になる。具体的には、次の2つの研究を行ってきた。 (1)肝疾患モデルによる微細構造の形態変化解析:特殊な餌を与えて、ヒト脂肪肝炎によく似た症状を呈する脂肪肝ラットモデルを作成し、肝臓片を採取した。肝臓サンプルの共焦点顕微鏡像を取得し、管中の空白部分も含めた構造抽出などの画像解析を、反応拡散系モデルを用いて行った。画像解析中、モデル方程式のフィティングパラメータが疾患進行度と統計的な差がみられることを見いだし、とりまとめ国際紙に投稿した。 (2)数理モデルを用いて3次元形態の要因特定研究:ラット発生段階を観察し、作成した4変数の偏微分方程式系数理モデルで得られるパターンと比較し、形態形成の性質、特に、肝細胞と各管の配置方向性に注目して解析を行った。結果をまとめ国際紙に投稿した。また、内部リズムによる運動性に関する観察について、最もフィットする数理モデルを統計的に検証することでその性質を解析した。この結果を国際紙に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度まで、微細周期構造の特徴を抽出するのに、空間相関などの手法を用いた物理的指標開発を重点的に行ってきた。しかし、生物のパターンにどうしてもみられる局所性が含まれるため、きれいな周期のピークとうがうまく抽出できずにいた。しかし、元画像を外場として与える反応拡散系モデルを用いた管構造抽出手法を新たに構築すると、そのモデルから得られる3次元パターンの周期に寛容性が含まれるため、生体パターンの局所性をも含めた特徴抽出が可能になった。このことを利用して、モデル式のパラメータの関係を利用して、疾患モデルラット肝臓片3次元像から疾患進行度を抽出する指標作成などができるようになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり当初の研究計画にそって進める予定である。とくに今年度作成してきた構造抽出のための画像解析手法において用いる反応拡散モデルのパラメータ利用について進展が見込めそうである。これは予定していなかった部分だがぜひすすめたい。
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Causes of Carryover |
今年度開発してきた反応拡散系モデルを用いた画像解析手法から、そのモデル中のパラメータを用いて疾患モデルラットの疾患進行度を抽出する指標を作成した。現在用いられている染色による判定法やこれまで言われてきた指標と私たちの提案している指標とを比較、検証することが必要であるし、本研究遂行に重要であった。そのため、1部計画していた実験が後回しになってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度末から類洞構造抽出のため、血管鋳型作成をはじめてきている。順次、観察、そしてその構造の解析を行っていく予定である。
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