2016 Fiscal Year Research-status Report
インド洋の赤道を横切る南北循環の力学:数十年周期の気候変動の理解に向けて
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26800249
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
名倉 元樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究員 (10421877)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インド洋 / 風成南北循環 / 現場観測 / 大気海洋結合モデル / 赤道波 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルゴフロートの観測値から得た水温・塩分場をグリッド化して地衡流計算を行うと共に、アルゴフロートのパーキング深度の絶対流速データを入手してグリッド化し、インド洋の平均循環場を推定した。海洋再解析データから計算された平均循環場と比較し、計算の妥当性を確認した。米国大気海洋庁/太平洋海洋環境研究所の共同研究者を訪問し、結果の新規性に関して議論を行った。現在、パーキング深度流速のグリッド値の精度を向上させると共に、論文を作成中である。 米国大気海洋庁/太平洋海洋環境研究所が赤道インド洋に展開している音響式流速系の観測データを入手し、赤道インド洋の平均流を調べるとともに、季節変動スケールでの赤道波の伝播について調べた。結果をとりまとめ国際誌(Journal of Physical Oceanography)に投稿し、受理・出版された。 平成29年度に実施する予定であった、各国の研究機関が提供する大気海洋結合モデルの長期積分結果を比較を前倒しで行った。インド洋の南北循環の湧昇域であるアラビア海について調べたところ、結合モデルには温度躍層の深さの水温が観測と比べて暖かすぎることがわかった。このようなモデルバイアスが発生する原因について調べ、アラビア海北部の冬季混合層が深すぎるため、高温・高塩な北アラビア海高塩分水とペルシャ湾水がモデル内で過剰に生成され、このためモデル内に高温バイアスが生じていることを明らかにした。現在結果を論文にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤道域の音響式流速系の観測値を解析し国際誌から論文を出版した。 アルゴフロートの現場観測値を用いたインド洋の平均南北循環の推定は、データ処理を進めると共に、論文の執筆を開始した状況である。この研究の結果は南インド洋の沈降域、赤道近傍の流れ、北インド洋のモンスーンに関連した流れを含んでいる。インド洋に関するこのような流れの全体像の把握はアルゴフロートの拡充によって初めて可能になったことであり、本研究は貴重な情報を提供すると予想される。得られた結果から、太平洋や大西洋との循環の差異についても明らかになっており、興味深い情報が多い。これらの成果を次年度に公表する。 大気海洋結合モデルについては、ハワイ大学の共同研究者とほぼ毎日メールやスカイプで連絡をとり、密接な議論を重ねた。結合モデルでは、現実にはあり得ないような物理過程によって変動やバイアスが発生することがあるが、本研究もそのような事例である。共同研究者との議論を通じてモデル内の物理過程を逐一綿密に議論し、その大方を把握することができた。この成果も論文を投稿する準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
大気海洋結合モデルについては成果を論文にまとめ出版する。 アルゴフロートの現場観測値を用いた平均循環の推定については、現在行っている海盆規模の循環場の推定の結果をとりまとめ、国際誌に投稿する。 現場観測値を用いた研究を行う過程で、過去の研究では知られていなかった特徴をいくつか発見した。これについては数値モデル等を用いて力学を検討する必要がある。また、現在の研究では海盆規模の解析を行なっており、空間解像度の粗い推定法を用いている。循環のキーポイントになると考えられる局所的な海域について細かい推定も行う必要があると考えられる。これらのテーマについて研究を開始し、より発展的に進めていく。
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