2014 Fiscal Year Research-status Report
微生物代謝効果から読み解く温泉堆積物のミクロスケール縞状組織の生成プロセス
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26800262
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高島 千鶴 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (10568348)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酸素安定同位体比 / 炭素安定同位体比 / steam heated water |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は,昨年度に調査をしたインドネシア スマトラ島にあるSipoholon温泉の調査と分析を引き続き行った.Sipoholon温泉には3つの主な湧水孔があり,それぞれの流路に炭酸塩を主成分とする温泉堆積物が堆積し,全体で約5万平方キロメートルほどの大規模な温泉堆積物が分布している.これまでの研究で,流下経路における堆積物表面の色の変化は,水温,流速,栄養源などの水質の変化に応答した微生物相に対応していることがわかっている.また,温泉堆積物の内部にはミクロスケールの縞状組織が発達し,微生物の活動を反映した日輪である可能性が高い. 本年度は,温泉水の生成過程について検討を行った.水温は約61℃,pHは6.48と中性を示し,カルシウムイオンと硫酸イオンを多量に含むのが温泉水の特徴である.陰イオンの組成から温泉水は天水起源の地下水に地熱貯留層から分離した蒸気により加熱され,その蒸気のみが混入して生成したと考えられる.温泉水の酸素安定同位体比は-9.25パーミルであり,調査期間中に降った雨の酸素安定同位体比(-2.6パーミル,-10.0パーミル,-12.3パーミル),付近の河川の値(-8.3パーミル)と近い値を示し,温泉水は天水起源であることを支持する.Sipoholon温泉は標高1000m付近に位置し,同位体の高度効果のため,赤道付近の値より軽い値になると考えられる.炭素安定同位体比は+1.2パーミルとマグマ起源ガスの値(-5~-4パーミル)より重い値を示す.この値は温泉水の生成過程や断層が発達していることを考慮すると,マグマ起源の脱ガスを反映していると考えられる. これらの研究成果はいつかの学会で発表を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の水質に焦点を当てた研究は,温泉堆積物の生成過程を明らかにする上で,基礎的かつ重要である.インドネシア Sipoholon温泉について水質,堆積物組織,微生物群集の情報が揃い,堆積物中に見られるミクロスケールの縞状組織について,総合的に検討できた.
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Strategy for Future Research Activity |
国内の縞状温泉堆積物に焦点を当て,研究を進める.予察的研究を終えているが,フィールド調査にて改めて水質や堆積物組織などの基礎情報を取得する.次に縞状組織の成因を明らかにするために,遺伝子解析により堆積物中の微生物群集の特定を行う.さらに,FISH法(蛍光プローブ法)で微生物の空間分布を把握し,縞状組織と微生物代謝様式の関連性について明らかにする.
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Causes of Carryover |
インドネシアSipoholon温泉調査に行き,その分析を優先的に行った.そのため,本年度立ち上げる予定だった実験装置の準備が進まなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費は,物品費として水試料や堆積物試料の分析や遺伝子解析に用いる消耗品に使用する.また,国内旅費として大分県鶴の湯,秋田県奥々八九郎温泉の調査や学会発表に使用する.
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