2015 Fiscal Year Research-status Report
日本の河川堆積物に最適なOSL年代測定法の開発―断層の活動性評価に向けて―
Project/Area Number |
26800263
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
徳安 佳代子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 博士研究員 (90721944)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | OSL年代測定法 / 河成段丘堆積物 / OSL信号特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、堆積物の後背地の地質を考慮し、個々の試料の光ルミネッセンス(OSL)信号特性に最適な新たなOSL年代測定法の開発を行うことである。この目的に向け、平成27年度では、1)熱に対する石英粒子の熱ルミネッセンスカラー(TLCI)やOSL特性の変化について検討した。また、2)平成26年度に採取した河成段丘堆積物から石英粒子を抽出し、蓄積線量の測定やその妥当性評価を行うとともに、試料の化学分析を行い、線量率評価を行った。また、得られたOSL年代値の妥当性を評価するため、同一露頭から採取したテフラ試料の降下年代とOSL年代との比較を行った。 1)では、石英粒子のOSL特性がどのような熱条件で変化するのかを検討するため、段階的に加熱処理した沿岸堆積物中の石英を用いて検討を行った。その結果、元来fast成分が存在しない試料では、800℃以上で熱してもTLCIやOSL成分に変化がないのに対し、元来fast成分を有する試料では、800℃以上で熱するとTLCIとOSL成分に変化が生じることが分かった。この成果は、国際学会(平成27年7月開催)において発表を行った。 2)では、木曽川沿い及び付知川(木曽川支流)沿いの段丘堆積物試料を用いた。木曽川沿いの露頭は、主に砂層からなり、分析の結果、砂層中にリワークしたテフラ(On-Pm1)を含むことが分かった。付知川沿いの露頭は砂層と軽石層で構成される。蓄積線量が適切に測定できているかを確認するドーズリカバリーテストを行った結果、全試料で良好な値(1.0±0.1)が得られた。リサイクリングレイショーについても1.0±0.1の範囲を示したことから、テストドーズによる感度補正が適切に機能していると考えられる。得られたOSL年代は40~50kaのものが多く、テフラ年代を考慮すると、OSL年代値はやや若めの年代が出ている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に予定していた現世河川堆積物中の長石粒子のブリーチング達成の可否について実施できなかったため、やや遅れているが、その他の部分は予定通り進んでいる。遅れている部分については、平成28年度に実施することで、3年間全体の実施内容の進展には影響がないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
測定した試料のOSL信号は、光に対する反応速度が比較的遅い成分を含むと考えられることから、反応速度の速い成分(fast成分)のみを解析により抽出し、年代測定を試みる。さらに、複数の測定手法を用いて年代測定を行い、個々のOSL特性に最適な測定手法について検討する。また、現世河川堆積物を採取し、長石粒子のブリーチング達成の可否について明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成27年度において機関業務が多忙となり、当初の計画通りに出張することができなかったため、未執行分の旅費が次年度使用額として発生することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析依頼の費用や野外調査等の旅費に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)