2016 Fiscal Year Annual Research Report
How affect the habitat specificity to the speciation of marine organisms
Project/Area Number |
26800265
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中野 智之 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (90377995)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分子系統 / アツガサガイ / 隠蔽種 / カサガイ / 軟体動物 / 生物地理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はアツガサガイ科アツガサガイ属の分子系統解析を行なった。アツガサガイ科は、熱帯ー亜熱帯域の石灰岩にのみ生息するカサガイである。本種群は殻形態が類似しており、正確な種同定には分子系統解析が不可欠である。そこで与那国島、台湾、フィリピン、インドネシアから採集されたサンプルを用い、分子系統解析と形態形質の精査を行なった。その結果、アツガサガイ属は、島ごとに異なる遺伝的なグループに細分化される事が判明した。しかしながら、与那国島と台湾から報告されているタイワンガサについては、フィリピン北東部にも分布している事が分かった。これらのことから石灰岩に限定された生息地は、島ごとの遺伝的な隔離を起こす原因と成りうるが、黒潮のような強い流れの影響する地域では、比較的分布域が広い種もいる事が分かった。また、タイワンガサは与那国島では少数個体しか報告しか無く、台湾から偶発的に移入して来ているものと考えられる。黒潮は浮遊幼生期における海流分散を促すが、台湾と与那国島の間の強い海流の流れは、分散を妨げる障壁にも成りうる事が分かった。
研究期間全体を通して、付着基質の異なるカサガイ類3属を対象に分子系統解析を行ない、付着基質がどのように生物種の分布域の構成に影響を与えるのか、また種分化に影響を与えるのかを明らかにする事を目的として研究を行なった。その結果、付着基質が限定的な種ほど生息地域が狭く、遺伝的な変異も大きかった。また付着基質を選ばない種は、分布域が広大で、遺伝的な変異が少なかった。これらの事から、カサガイ類の分布は、付着基質が大きく影響を与えている事が分かった。付着基質が限定的な種ほど、生息環境に変化があった場合、絶滅のリスクが高い事が予想される。
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