2014 Fiscal Year Research-status Report
恐竜の各分類群の摂食様式の違いと初期放散の時期の違いの関係の解明
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26800267
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
久保 泰 福井県立大学, 恐竜学研究所, 客員講師 (40719473)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食性復元 / 恐竜 / 初期放散 / マイクロウェア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では歯化石の微細な傷(マイクロウェア)に基づく恐竜類の食性の復元、および恐竜の分類群ごとの食性の違いがどのようにその放散時期に影響を与えたのかを調べることを目的にしている。特にマイクロウェアの分析では従来の電子顕微鏡写真の観察による主観的な分析ではなく、レーザ顕微鏡により化石表面の三次元座標データを取得し、“表面粗さ”の国際工業規格ISO25178によって数量化する、恐竜には未適用の手法を用いることを目指している。 まずは、新手法が実際に化石に適用できるのかを調べるために、詳細な食性情報が既知の現生ニホンジカ個体群を用いて、ISOパラメータがどの程度の精度で食性を復元できるのかを調べている。国立科学博物館のレーザー顕微鏡を用いて、データの収集を行っている。これまでのところ一部のISOパラメーターと食物中の草本量とのには有意な相関が得られており、新手法を用いることで従来の電子顕微鏡を用いた手法よりも高精度な食性復元が行える可能性がある。 一方、新しい手法では哺乳類の比較用データの収集等に時間がかかり、その成果が恐竜化石に反映できるようになるまでには、まだ時間が必要である。そのため、従来の電子顕微鏡写真を用いたマイクロウェアの観察を日本産の竜脚類恐竜について行った。 また、恐竜全体の初期放散と移動様式の関係についても研究を進めている。恐竜に見られる指行性は分類群に関わらず中~大型の体サイズで適応的である可能性があり、恐竜が出現後に大型化を遂げるた一方で、同時代のしょ行性のワニ類や哺乳類は大型化の傾向を見せなかったのは、指行性としょ行性の違いが原因の一つの可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
三次元座標を用いたマイクロウェアの解析は、新しい手法であり、方法論が確立していない。そのため現状では恐竜への適用をめざして、食性が既知の現生哺乳類を用いて食性復元の信頼性を確かめている。ただ、この検証作業そのものに報告する価値があるので、性急には進めず、まずは哺乳類を用いた検証研究を論文として完成することを目指している。 また、本務である博物館の仕事が忙しかったこともあり、予定していた国際学会への参加や海外での標本調査は見送った。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザー顕微鏡によるマイクロウェアの解析は予想以上に時間がかかることがわかった。しかし、食性が既知の哺乳類を用いた新手法の復元精度を測る研究を、まずはしっかりと進め、科研費を用いた研究成果の発信のために、まずは哺乳類の研究を論文として投稿することを目指す。
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Causes of Carryover |
本務である博物館の仕事が忙しく、予定していた海外の博物館調査および学会発表ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度であるため成果の発信に力を注ぐ、学会発表の旅費や、オープンアクセスの雑誌への掲載料金などを主な支出として想定している。
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Research Products
(2 results)