2015 Fiscal Year Research-status Report
初期の四肢動物における頭骨形態と捕食メカニズムの適応進化
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26800269
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
松本 涼子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 学芸員 (00710138)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 捕食メカニズム / 頭骨 / 四肢動物 / 適応 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
・本研究では、初期の四肢動物と頭骨の外形が類似した現生両生類(有尾類)を研究材料としている。そのため、有尾類の各系統の中から異なる捕食様式(吸引、咬合、舌によるシューティング)を行う各種の液浸標本を収集し、CT撮像及び立体構築を行った(20種以上)。CTデータは、頭骨の立体形形状をデジタル化するだけでなく、頭骨の各骨の縫合様式や、各骨の厚みなどの基礎データを集積する目的があり、次年度はこれらのデータをもとに力学解析及び形態解析を行う。 ・初期の四肢動物から有羊膜類の系統に沿って、捕食様式と口腔内の形態(口蓋歯の配列)の進化に関する論文をJournal of Anatomyに投稿した。この論文によって、口蓋歯の配列は捕食様式と密接に関連していること、口蓋歯が舌と共に獲物を口の奥へと送る役割があること、初期の四肢動物から有羊膜類へと進化する過程でより舌を発達させた捕食様式に移行したこと、しかし更なる進化によって、より高度な咬合様式の獲得などにより各系統で口蓋歯が消失したことを明らかにした。 ・英国ロンドン大学を訪問し、新しい形態解析方法と、MRIのように軟組織もCTで撮像する方法を習得した。これらの手法は来年度活用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解剖学的側面:初年度に得られたオオサンショウウオの解剖データをもとに、水圏での捕食に関わる筋の詳細な記載及び作図に着手した。サンショウウオの中でも陸で特殊な摂食をするプレソドン類(カメレオンの様に舌が遠くに飛び出る)の頭骨CTデータを集める事が出来たが、解剖用の標本を入手する事が出来なかった(大部分はホルマリン固定されていて解剖に適さない標本)。そこで、三次元的に筋肉の情報を得るため、ヨウ素染色を行い、CT撮像をする方法に切り替える予定である。 形態解析的側面:本研究の基礎データとなる両生類の頭骨のCTデータは、昨年度から継続的に集積し、立体構築も順調に行なうことが出来た。しかし、予定していた形態解析までには至らなかった。しかし、新たな解析手法を英国ロンドン大学で学ぶ事が出来た。 力学的解析:陸生のサンショウウオの基礎データの収集は次年度に持ち越しとなったため、力学解析についても実行出来なかった。しかし、力学解析に用いるソフト(voxelcon)を開発している株式会社クイントの社長と解析手法及びソフトの利用に関する打ち合わせを行ない、研究協力体制を整えた。 昨年度の計画で予定した通り、Journal of Anatomyに本研究題材のレビューとなる論文「四肢動物の捕食様式の進化に伴う口蓋歯の配列パターンの変遷」を投稿することができた。現在査読者からのコメントを修正中であり、平成28年度中に印刷が期待される。解析は若干遅れているものの、データの集積と成果発表については比較的バランスよく進行しているため順調であると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
解剖学的側面:昨年度集積した水圏で摂食を行なうオオサンショウウオと比較するため、陸で摂食を行なうサンショウウオ(タイガーサラマンダーやプレソドン類)の解剖・記載を引き続き行なう。また、前述した通り、新たにヨウ素染色を用いた軟組織の立体情報の収集がタスクとして加わった。標本は既に入手しているが、ヨウ素染色及びCT撮像、立体構築を今年度行なう予定である。
解析:上記の解剖情報をもとに、水生のオオサンショウウオと陸生のタイガーサラマンダーなどを用いて、水圏と陸圏での摂食様式の違いと、それぞれの頭骨に与えられる力学的影響を解析する予定である。また、形態解析についても、解剖情報をもとに順次行なう予定である。
研究成果を総括し、本研究課題の集大成となる、両生類の頭骨形態と捕食機能の進化に関する論文の執筆を順次行なう。本研究課題から以下の3つの題材に関する論文が今年度中に作成できるものと期待される。:1)オオサンショウウオの解剖学的記載(顎、咽頭部分の筋について);2)異なる摂食様式(吸引・咬合)と頭骨形態の力学的適応;3)頭骨が受ける様々な力の種類と頭骨の縫合様式の対応関係
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Causes of Carryover |
当初、応力解析ソフト(voxelcon)の購入を予定していたが、消費税増税と共に値上がりしてしまい、予定額では購入する事が出来なかった。そこで、ソフト会社と交渉し、半年間のレンタルでソフトを使用する事となったため、H28年度までにデータを全て揃えてから次年度ソフトをレンタルし、纏めて解析することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
一部の検体は、非常に小さく、高性能の顕微鏡がなくては解剖が難しい事が分かった。そこで、昨年度の繰越金と当年度の予算を用いて、実体顕微鏡を購入予定である。また、応力解析ソフトのレンタル料として使用予定である。その他、ヨウ素等の薬剤の購入、学会の参加費、標本調査費の旅費として使用する。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Fossil vertebrates from the Late Cretaceous (Turonian) of Iwate Prefecture, eastern Japan.2015
Author(s)
Hirayama, R., Takisawa, T., Sasaki, K., Sonoda, T., Yoshida, M., Takekawa, A., Mitsuzuka, S., Kobayashi, Y., Tsuihiji, T., Tsutsumi, Y., Manabe, M., Matsumoto, R., Kusuhashi, N., Kato, T., Takakuwa, Y., Miyata, S., Ando, H., Oishi, M., Mochizuki, T., Okura, M., and Yamaguchi Y.
Organizer
Society of Vertebrate Paleontology
Place of Presentation
Dallas, USA
Year and Date
2015-10-13 – 2015-10-17
Int'l Joint Research
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