2014 Fiscal Year Research-status Report
海生爬虫類の水生適応:組織学的アプローチから復元する首長竜類の遊泳能力の進化
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26800270
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
林 昭次 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (60708139)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海生爬虫類 / 首長竜類 / 内温性 / 遊泳能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
首長竜類の生態進化を明らかにするため、欧州産・国産(北海道・鹿児島・香川)・カナダ産の首長竜類、ならびに比較のために首長竜類の外群にあたる分類群(ピストサウルス類・ノトサウルス類)と現生海生爬虫類・哺乳類の組織採取ならびにCT撮影を行った。まだすべての研究対象となっている標本から組織サンプル・CTスキャンを取り終えてはいないが、現在完成した骨組織サンプルから、予察的にではあるが、首長竜類について以下の新たな発見があった: <1.首長竜類の成長様式と内温性への進化の解明への手がかりの発見> 骨の沈着速度と、現生動物では骨の中に1年に1本できる成長停止線の数を分析した結果、現生哺乳類のように、首長竜類は非常に速く成長し、種によっては5年ほどで成体になることが示唆された。一方、首長竜類の外群にあたる分類群では、骨の沈着速度が遅く、現生爬虫類のように成長が遅い組織が観察できた。首長竜類で観察された速い成長速度の組織は、首長竜類が高い代謝率を持ち、鰭竜類の中で首長竜類だけが体温を一定に保てた内温動物として進化した可能性が示唆できそうである。 <2.首長竜類の遊泳様式の多様性の可能性> 首長竜類は、遊泳能力に優れた現生動物がもつ海綿質で軽量化された背骨を持つことが明らかになった。特に派生的な種のほうが、より海綿化した脊椎骨を持つ傾向にあった。これは、重く緻密な構造の骨を全身にもつ、首長竜類の外群にあたる分類群(ノトサウルス類など)の特徴とは非常に異なる。そのため、首長竜類はその系統進化に従って、遊泳能力が高くなっていたと解釈することができそうである。また、派生的な首長竜類でも、首の短いものと長いもので、手足の骨構造の特徴が異なることが予察的に明らかになってきた。従って、首長竜は、分類群によって、その遊泳能力に差異があった可能性があることが示唆できそうである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織サンプルも順調に集まっており、当初の予定通りおおむね順調に進行している。ただ、CT撮影と薄片製作の日程調整がうまくできなかったため、本年度中にCT撮影・薄片製作を終了させる計画だった一部のサンプルがまだ終わっていないものある。
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Strategy for Future Research Activity |
組織サンプル数がまだ十分に足りないため、さらに標本数を増やす必要がある。また、現在集まった標本のいくつかは、組織観察のための薄片製作・CT撮影を行えていないものがあるので、順時進めていく。
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Causes of Carryover |
一部の標本の薄片製作・CT撮影を終わらせることができなかったため、その経費である6万円ほどが残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に薄片製作・CT撮影の経費のために使用する。
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