2014 Fiscal Year Research-status Report
レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いた内核・外核物質の密度測定
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26800274
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
桑山 靖弘 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 助教 (00554015)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地球中心核 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震波観測により得られた核の密度分布と鉄の高圧下での密度を比較した研究によると、地球の内核および外核には鉄やニッケルのほかに軽元素と呼ばれる鉄よりも軽い元素が含まれていることが示唆されている(例えばBirch, 1964など)。常圧下では、鉄にその他の元素が固溶すると、融点・密度・結晶構造・弾性定数など様々な物性が大きく変化する事がよく知られており、高圧下においても同様に、軽元素の存在はその物性に大きな影響を与えると考えられる。核中の軽元素の候補として、水素・炭素・酸素・珪素・硫黄などが考えられているが、どの元素がどの程度含まれているかについては全く分かっていない。 地震波観測により得られる内核及び外核の内部の密度分布は、弾性波速度分布と共に、核の化学組成を制約する上での数少ない情報の一つである。地震波観測から得られた内核と外核の密度分布や、内核-外核境界の密度不連続と比較し、核に含まれる軽元素の種類と量に制約を与えるうえで、核の構成物質の候補と考えられる鉄-ニッケル-軽元素合金の、核の圧力・温度条件下における密度データは必要不可欠である。そこで、本研究では、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル超高圧高温実験技術を用いた放射光X線その場観察により、鉄合金の高圧かつ高温での密度の測定を行った。実験は、固体と液体の両方に関して行い、固体鉄合金としては、鉄-珪素合金に関して地球中心核条件に相当する温度圧力領域における温度-圧力-密度状態方程式を決定し、また珪素の固体鉄への固容量も決定した。液体鉄合金に関しては、純鉄や鉄-酸素合金などに関して実験を行い、これらの液体合金からのX線回折データを測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、地球中心核に含まれる軽元素の種類と量に制約を与えるうえで重要な、核の構成物質の候補と考えられる鉄-ニッケル-軽元素合金の、核の圧力・温度条件下における密度測定を目的としている。固体鉄合金に関しては、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル超高圧高温実験技術を用いた放射光X線その場観察により、核に含まれる物質として有力な鉄-珪素合金に関する実験を行い、地球の中心核に相当する圧力条件までの密度データを取得した。また、放射光X線回折実験の結果から、内核条件の温度圧力条件下における固体鉄への珪素の固容量がおよそ9重量パーセントであることを決定した。 また、同様にレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル超高圧高温実験技術を用いた放射光X線その場観察により液体鉄合金についても実験を行った。本研究では、核の密度を考える上でのもっとも基礎になる純鉄に関する実験を行うとともに、核に含まれる軽元素の候補として考えられている炭素・酸素・珪素・硫黄と鉄の合金に関しても実験を行い、また実験制度の検証のため、比較対象としてニッケルについても実験を行った。高感度の検出器を導入するとともに、加熱方法やデータの取得方法などを改良し、高圧下においても良質なX線回折データの取得に成功した。現在、データの解析方法の改良に努めているところである。以上のように、現在のところ本研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に引き続き液体鉄合金のX線回折データの測定を行う。本年度は端成分に加え、中間組成を持つ固溶体合金についても実験を行う。また100万気圧を超える高圧下での密度測定も行う。100万気圧を超える超高圧下では試料のサイズがそれ以下の圧力における物よりも格段に小さくなる。液体のX線回折シグナルは、固体からのX線回折シグナルに比べて極端に微弱なため、より高精度の測定が必要である。そのために、試料サイズの保持や、より長時間液体状態を保持して、よりノイズの少ないデータの測定に取り組む。また、地球液体核全域の圧力条件でのデータ測定に挑戦する。得られたデータから密度を算出するうえで、X線回折強度の規格化の制度が非常に重要である。本研究ではより解析に適したバックグラウンドが得られるように測定装置周りの改良を行うとともに、解析手法の改良を行う。
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Causes of Carryover |
2015年前期の欧州シンクロトロン放射光研究所で使用予定。2015年前期分として申請した課題は受理済みであるが、マシンタイムが7月となったため。年度の区切りが日本と異なるため、2015年度へと繰り越しとなったが、研究としてはおおむね計画通りである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
欧州シンクロトロン放射光研究所での実験のための準備及び旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)