2014 Fiscal Year Research-status Report
島孤玄武岩マグマの脱ガス過程:二次イオン質量分析法によるアプローチ
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26800275
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
濱田 盛久 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部物質循環研究分野, 研究員 (60456853)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 無水鉱物の水 / 島弧玄武岩 / 斜長石 / 三ノ目潟火山 |
Outline of Annual Research Achievements |
火山岩中の無水鉱物には,ppmオーダーの微量の水素が不純物として含まれている.無水鉱物の水素含有量は,共存しているメルトに含まれる水の量や挙動の指標として利用可能である.本研究では,二次イオン質量分析計(SIMS)を用いて,水に富む島弧玄武岩マグマの脱ガス過程を明らかにすることを目標としている. 斜長石は,島弧玄武岩の中に量的に最も多く含まれる無水鉱物であるにも関わらず,特に研究例が少ない.本研究ではまず,斜長石の水素含有量に焦点を当てた.平成26年度においては,斜長石中の水素含有量や,共存する玄武岩質メルトの含水量を二次イオン質量分析法により定量化するための標準試料を高温高圧実験を行って準備した.二次イオン質量分析装置は現在立ち上げ中であり,平成27年度には利用を開始して分析データを出す予定である. 平成26年度においては,フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いて,東北日本の背弧火山である三ノ目潟火山の高MgO (約8 wt.%) スコリア中の斜長石の水素含有量の分析を行った.斜長石には,メルトから晶出した微斑晶~石基サイズの斜長石(灰長石An成分値が70~80)と,地殻物質に由来すると考えられる大型斜長石(灰長石An成分値が32~35)の2種類が観察される.後者は三ノ目潟火山のマグマとは無関係の外来結晶であるが,本研究では,この大型の斜長石の分析を行った.その結果,メルトと接して融食された斜長石の外縁部には200 wt. ppm H2Oを超える高濃度の水素が含まれているのに対して,外縁部から数百μメートル以上離れた内部の水素含有量は比較的均質で70+/-10 wt. ppm H2Oであった.このことから,三ノ目潟火山においては,含水量が5 wt.%以上の高含水量メルトが地殻中の斜長石を取り込んだ後,1時間程度でマグマが地表に噴出したことが推定された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,二次イオン質量分析計を用いて無水鉱物中の水素を定量分析することを目指している.平成26年度においては,斜長石中の水素含有量を行うことによって作成するなど,二次イオン質量分析計を用いる分析の準備を行った.しかしながら,使用を予定している海洋研究開発機構・高知コア研究所の二次イオン質量分析計は立ち上げ中であり,平成26年度中の利用開始には至らなかった.このため,平成26年度においては,代替策としてフーリエ変換赤外分光光度計を用いた分析により研究成果を上げた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には二次イオン質量分析計の利用を開始する.二次イオン質量分析計を用いることにより,フーリエ変換赤外分光光度計では分析が困難な,斑晶スケールの斜長石の水素含有量の定量化や高解像度の水素含有量マッピングを行いたい.マッピングを行うことにより,マグマの脱ガス過程や噴火に至るマグマの上昇過程に制約を与えることができる.研究対象として,伊豆大島火山1986年噴火(ストロンボリ式噴火)によって得られたスコリア中の斜長石を用いる. 二次イオン質量分析計では,水素の定量分析ばかりでなく,水素同位体比も測ることができる.平成27年度においては,斑晶中のメルト包有物の含水量や水素同位体比も分析して,ホスト斜長石の水素含有量との関係を系統的に明らかにする.
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Causes of Carryover |
使用を予定している海洋研究開発機構・高知コア研究所の二次イオン質量分析計は立ち上げ中であり,平成26年度中の利用開始には至らなかった.このため,高知コア研究所へ出張して滞在するために計上した旅費が計画通りに執行できなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,高知コア研究所において,二次イオン質量分析計を用いた分析を行う.そのための旅費に未使用額を充てる.
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Research Products
(6 results)