2014 Fiscal Year Research-status Report
レーザー加速パルス電子源の周辺プラズマ・電磁場制御による超高強度化
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26800280
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 峻介 京都大学, 化学研究所, 助教 (40724711)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高強度レーザー / 短パルス電子源 / 高強度電子源 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質が超高速に変化する様子を直接捉えることが可能となれば、基礎物理や物質科学をはじめとする広範な分野の基礎研究に発展をもたらす。高強度短パルス電子源はこれを可能にする魅力的な放射線源の一つであり、よりパルス幅が短く、1パルスあたりの電子数のより多い、“高強度・短パルス電子源”の開発が精力的に行われている。しかし、現行の短パルス電子発生手法では飛躍的な高強度化が本質的に困難であるため、新たな超高強度短パルス電子源の開発が望まれている。本研究の目的は、1パルスあたりの電子数が1pC(600万個)の、世界最高の超強度短パルス電子源を実証することである。 我々はこれまでに、高強度フェムト秒レーザーと固体薄膜の相互作用による電子加速の際、強度の低いフェムト秒レーザーを薄膜裏面に300ピコ秒早く照射すると、レーザー加速電子パルスの強度が単一照射の場合に比べ10倍以上向上することを発見している。このような電子パルスの高強度化現象についての報告はこれまでになく、そのメカニズムは明確でない。しかし二つのレーザーパルス間の遅延時間や強度などの諸条件を最適化することで、更なる高強度化達成の可能性を示唆するデータが得られていた。そこでこれまでの成果を発展させ、世界最高の超高強度短パルス電子源の実証を目指した。 電子パルス高強度化現象を制御するためには、非常に多くの照射条件を最適化しなければならないことが分かっている。すべての条件を最適化することは容易ではないため、まず電子パルス高強度化のメカニズム解明を目指し、下記①~④の研究を実施した。①時間分解光干渉計によるプラズマ密度分布測定 ②電子エネルギースペクトル測定器による電子エネルギー分布の測定 ③電子放射角度分布測定器による放射角度分布の測定 ④PICコードによる数値シミュレーション
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」を達成するための、平成26年度の研究実施計画を要約すると次の四点であった。①時間分解干渉計の構築によるプラズマ密度分布の測定②放射流体コードを用いたプラズマ密度分布の数値計算③電子エネルギースペクトル測定器及び電子放射角度分布測定器による電子パルス特性の測定④電磁粒子コードを用いた電子パルス特性の数値計算。現在までに①、③、④を実施し、①③の実験により得られた電子スペクトルの変化や、電子ビームの高強度化を④のシミュレーションによりよく再現することに成功した。これによりレーザー加速電子が高強度化するメカニズムの一端が明らかとなった。 また、研究の目的を達成するために重要となる電子パルスによる電場測定法を論文としてまとめ、結果はPhysical Review Eに掲載された。本結果は平成27年度に実施予定の電子偏向法によるレーザープラズマ近傍電磁場の時間分解測定のために重要である。 以上より、全体として、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における平成27年度の研究計画は、電子偏向法によるレーザープラズマ近傍電磁場の時間分解測定、3次元荷電粒子軌道解析コードを用いた電子パルス特性の計算、および超高強度短パルス電子源の実証であった。これらの研究を実施し、平成26年度までに得られた研究結果と統合し、電子パルス高強度化メカニズムの全貌を解明する。得られた知見を基に、高強度フェムト秒レーザー及び低強度レーザーの照射条件やレーザー照射ターゲット、電子光学系の最適化を行うことで、超強度短パルス電子源を実証する。
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Causes of Carryover |
平成26年度に特殊な光学部品の購入を計画していた。本光学部品は平成25年度以前に購入実績があり、特殊な仕様を満たすことを確認していた。平成26年度に本光学部品を注文したところ、業者の装置が不調なため、特殊な仕様を満たした光学部品を年度内に納品することができなかった。このため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に購入を計画していた特殊な光学部品の購入と、申請書に記載した物品の購入を計画している。
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Research Products
(5 results)