2014 Fiscal Year Research-status Report
構造を規定した酸化物-擬似液体水界面における光触媒メカニズムの解明
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26810006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 敏樹 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00630782)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水分解光触媒 / 実用表面科学 / 水分子吸着 / 赤外吸収分光 / 過渡吸収分光 / 構造規定表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
光触媒反応の反応性評価や反応活性増大メカニズムを解明することは重要な研究課題である.本研究では,光触媒の反応機構を理解するために、光励起で生じた電子のダイナミクスと,その表面吸着水効果を評価した。特に本年度は酸化チタン(ST-01/石原産業)を試料として用い、水蒸気圧力制御下における水吸着挙動をFT-IRで評価し、同時に赤外過渡吸収分光によって電子のトラッピングを評価することで以下のような開拓的な成果をあげた。 赤外吸収スペクトル測定の結果から1層目、2層目および多層吸着水の吸着挙動を以下のように解明することができた.1層目の吸着水は低圧(0.01 Pa)ですでに一部吸着しているが、0.01- 100 Paの間でその吸着量が増加し、100 Paで吸着量が最大になる。100 Paより高い圧力ではice-likeな赤外吸収スペクトルを示す2層目の吸着水の増加が顕著にみられると同時に、1層目に対応する吸収バンドが減少することが判明した。OH伸縮振動の低波数シフトの度合いは水が受ける相互作用の大きさを反映していると考えられる。1,2層間の水素結合ネットワークを形成に伴い,二酸化チタン表面と1層目の水分子の間の相互作用が弱められて、1層目吸着水が2層目の吸着水と同等のice-like構造に変化したと考えられる。同時測定している過渡吸収強度の変化から,二酸化チタン表面と1層目の水分子の間の相互作用が電子補足には本質的であり,1層目の吸着水分子がice-like構造に変化することで電子補足能力が失われることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,光触媒の反応機構を理解するために、光励起で生じた電子のダイナミクスにおける表面吸着水効果を世界に先駆けて明らかにすることができた。光触媒反応に関与する表面構造や吸着水の構造(ice-like構造・liquid-like構造等)について直接的観測に成功した例はない.本年度は,ナノ表面分子科学の知見に基づいて表面吸着水を考慮した光触媒反応機構を提唱するための大きな足掛かりを得ることができたという点で,当初の計画を大きく超えた成果を出すことができたといえる.この成果は現在論文執筆中であり,近日投稿予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
酸化チタンに吸着した水のスペクトルはその作製方法によって多種多様に変化することが知られている。今後は,構造を規定した二酸化チタンナノ粒子を用いて系統的に赤外吸収スペクトル,及び過渡吸収測定を行う.今回明らかにしたST-01における結果を元に比較考察することで,二酸化チタン表面全般にあてはまる統一的な電子補足(水の還元反応)メカニズムを明らかにすることを目標とする
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Research Products
(7 results)