2015 Fiscal Year Research-status Report
軟X線吸収分光法によるクロスカップリング反応中間体の直接検出
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26810010
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
湯澤 勇人 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 特別研究員 (30636212)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 軟X線分光 / クラウンエーテル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではクロスカップリング反応における中間体を軟X線吸収分光によって直接検出することを目指して研究を行ってきた.しかし,平成26年度の研究において本反応のような多成分系では基質や溶媒,添加剤,触媒の組み合わせをスクリーニングしても主要な吸収ピークが重なり合ってしまう問題を避けられなかった.そこで平成27年度の前半において,この問題を改善するための検討を行ったが非常に困難であったため,当初の研究方針では期間内に成果をまとめることが不可能であると思われた.そこで平成27年度は研究計画調書に記載の通り系の変更を行うこととした.具体的には,クラウンエーテルを用いた系を検討するための足がかりとして電解質-クラウンエーテル溶液における相互作用を検出できるかを検討した. 実験はチオシアン酸カリウムおよび種々のクラウンエーテルを溶解した水溶液をUVSORの軟X線アンジュレータービームラインBL3Uにて透過法による軟X線吸収分光(XAS)測定を行った.また固体のチオシアン酸カリウムの測定は真空チャンバー内で試料電流を測定することにより行った. 検討の結果,KのL吸収端XASはクラウンエーテルの孔径に依存して二つの吸収ピークの比率が変化しておりクラウンエーテルによる包接の影響を反映しているものと考えられた.また,SCNのNのK吸収端XASはクラウンエーテルが導入されたかどうかにかかわらず一定の吸収エネルギーを示したのに対し,CのK吸収端XASはクラウンエーテルを導入すると低エネルギー側にシフトした.この傾向は固体のKSCNのCのK吸収端XASが示す吸収エネルギーに近づく傾向を示すため,包接されたKとの相互作用が強まることが予想された.以上のように軟X線吸収分光においてクラウンエーテル-電解質溶液系の測定が可能であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度において測定の問題点を抽出することができ,平成27年度でその問題を解決する予定であったが検討の結果,当研究課題の期間では解決することが難しい問題であることが判明した.これにより系の変更が必要となったため当初の予定よりも遅れが生じている.そこで当初の予定から研究期間を一年延長し現在検討している系を結果にまとめる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
クラウンエーテル-電解質間の相互作用が観察可能であることが分かったので平成28年度はそれを用いた反応の軟X線吸収分光観察を試みる予定である.また可能であれば電気化学反応も合わせて検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究遂行において系を変更したため研究期間を一年間延長する必要があり,研究期間延長申請を行って了承を得ている.また平成28年度の方が実験のために研究費を使用しなければならないことが多いと予想されたため,平成27年度の研究費を使用を抑え平成28年度に回すこととした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に反応系を変更したため,それに必要な反応装置や試薬を購入する予定である.
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