2016 Fiscal Year Research-status Report
キノン類の光レドックス反応を利用した分子変換法の開発
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26810018
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
安藤 吉勇 東京工業大学, 理学院, 助教 (40532742)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナフトキノン / 光化学反応 / 酸化還元 / 立体特異的合成 / 全合成 / 天然物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続きスピロキシンAの全合成を目指した。さらに、前年度に開発した1,2-ナフトキノンの光酸化還元反応を天然物の部分構造へ展開できないか検討した。 スピロキシン類はナフトキノンがスピロエーテル構造とスピロアセタール構造を介して二量化した複雑な構造を持つ天然物である。さらにその骨格は酸素や塩素によって高度に修飾されている。中でもスピロキシンAは抗腫瘍活性を持つことが知られており、その活性はDNAのアルキル化を経て発現すると考えられているが、その詳細は不明である。そのため、この全合成が達成されれば、その解明が期待できると考えられる。しかし、その合成化学的難易度の高さから、これまで全合成を達成したグループは皆無である。 我々は、開発した光レドックス反応を鍵としてスピロキシンAの全合成研究へ展開した。その結果、反応前駆体を適切に設計することにより、連続的酸化還元反応を見出し、簡素な前駆体から複雑なビシクロ骨格を一挙に合成することに成功した。さらに、この反応は立体特異的に進行し、最も構築が困難な不斉第4級炭素原子の立体制御に成功した。ここから官能基変換を行うことにより、スピロキシンAの初の全合成を達成した。 さらに、1,2-ナフトキノンの光反応をγ-ルブロマイシンの部分骨格の合成へと展開したところ、目論見通り光レドックス反応が進行し、鍵となる5,6-スピロアセタール構造の合成に成功した。今後はこの知見を基にルブロマイシン類の全合成へと展開する予定である。また、1,2-ナフトキノンの系においても立体特異的に反応が進行するか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であったスピロキシンAの全合成を達成した。さらに、当初の計画には含まれていなかったオルトキノンの光反応を開発し、天然物の部分骨格へと応用展開できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した合成ルートを応用して、より高度に酸化された類縁体であるスピロキシンBを合成する。また、オルトキノンの光酸化還元反応を応用してルブロマイシン類の合成へ展開する。 一方で、ナフトキノンの光反応を活用してさらなる分子変換法を開発する。
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Causes of Carryover |
出張を伴う外部発表が少なく、旅費をほとんど支出せずにすんだため。 また、当初計画していた光反応装置のランプ交換をせずにすんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
光反応装置の交換用ランプを購入する。 成果を外部へ発信するために、論文の掲載費用や学会参加のための旅費を支出する。
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Research Products
(7 results)