2014 Fiscal Year Research-status Report
ハロアルキンへの選択的求核付加反応による精密合成手法の開発
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26810019
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
重田 雅之 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (70607514)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハロアルキン / スルホンアミド / 立体選択的付加 / 減炭反応 / 生物活性化合物 / アルカロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ハロアルキンに対する種々の求核剤の立体選択的付加反応を開発し、さらに得られた生成物を利用して、生物活性化合物など機能分子の効率的合成法の確立を目指したものである。これまでに開発してきたハロアルキンへの付加反応について、今後のアルカロイド合成等の応用を見据え、当該年度には基礎的な知見を拡充するべく各種求核剤の適用範囲の検証とその拡大を目指し検討を行い、以下の成果を得た。 1)N-アルキルスルホンアミドの付加反応を経て、置換ピロリジンの新規合成法を開発した。N-アルキルスルホンアミドのハロアルキンへの付加反応は、トリフルオロメタンスルホニル基を用いることによって高収率で進行し、対応する付加体を立体選択的に与えた。なお、シクロプロピル基を有するスルホンアミドの場合には、分子内環化反応を経て、スピロピロリジンへと誘導した。 2)カルボン酸アミドの付加反応を実現した。無溶媒条件下にて加熱することで、これまで困難としてきたハロアルキンへのカルボン酸アニリドやキノリノン類の付加が収率良く、また立体選択的に進行し、単一の異性体を与えることを見出した。さらに、アニリド付加生成物に塩基を作用させ、発生させたエノラートの分子内求核置換反応によってアルキリデンラクタムへの誘導も行った。 3)付加を経てハロアルキンの末端を切断する減炭反応を開発した。他のアルキンが共存するなかでも、ハロアルキン部位において選択的に減炭反応が起こり、対応するアミドを与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初の予定と照らして、「研究実績の概要」でも述べたように本研究は順調に進展している。具体的な研究成果は以下のとおりである。 1)N-アルキルスルホンアミドの付加反応:N-アルキルスルホンアミドの付加反応は検討当初、低収率に留まっていたが、スルホニル基の置換基効果を検証するなかで解決の端緒を見出し、高収率で付加体を得る方法へと発展させた。 2)カルボン酸アミドの付加反応:ハロアルキンへの窒素求核剤は、研究開始時においてその適用範囲は限定されていた。この現況を打破するため、各種条件を検討した結果、無溶媒下にてカルボン酸アミドとハロアルキン、塩基を混合し加熱することで、収率良く付加反応が進行することを見出した。 3)減炭反応:多重求核付加反応の検討過程において、求核剤と酸素によるアルキンの切断反応を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度も応用の基盤となる求核剤の適用範囲の拡張を行う。一部初期的な知見を得ているヘテロ環化合物の付加反応の適用性の拡張と、各種求核剤の多重求核付加反応の開発に重点を置き、ハロアルキンの合成化学的利用を検討する。さらに得られる付加体のハロアルケン(ビニルハライド)の利用法を拡充させて生物活性化合物の合成へと繋ぐ足場を作る。
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Causes of Carryover |
当初計画を超える効率的な研究活動が遂行でき、当初目的を達成したために、使用額を軽減することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度以降において、当該研究の成果に基づく応用展開を当初計画以上に拡充させて、当該助成金を使用する。具体的には、免疫抑制剤、炎症抑制剤等のアルカロイド合成を試行し、本開発手法の有用性を顕示する。
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