2015 Fiscal Year Research-status Report
ハロアルキンへの選択的求核付加反応による精密合成手法の開発
Project/Area Number |
26810019
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
重田 雅之 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (70607514)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルカロイド / 全合成 / 立体選択的付加 / ハロアルキン / スルホンアミド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ハロアルキンに対する種々の求核剤の立体選択的付加反応を開発し、さらに得られた生成物を利用して、生物活性化合物など機能分子の効率的合成法の確立を目指したものである。前年度までに開発したハロアルキンへの付加反応に基づいて、当該年度には生物活性分子の合成を行い、以下の成果を得た。 1)フェナントレンインドリチジン類の合成法を開発し、天然アルカロイドtylophorine及びその類縁体の合成を達成した。具体的には、フェナントレン骨格を有するスルホンアミドのブロモアルキンへの付加による(Z)-ブロモアルケンの調製と環化反応によって主骨格を構築し、続く官能基変換、保護基の除去、光延反応による閉環反応によって、天然物の合成を達成した。 2)キノリノン類とハロアルキンの付加反応を開発し、薬剤合成を行った。前年度に見出したハロアルキンに対するカルボン酸アミドの付加の知見に基づき新規求核剤を探索した結果、1,2-キノリノンおよび1,4-キノリノンの付加が効率的にハロアルキンに付加することを見出した。さらに、生成した付加体を用いて薬剤、光増感剤の合成を行った。 3)ハロアルキンに対する2-アミノアルコールの二重付加による1,4-ジヒドロオキサジンの簡便合成法を開発し、これを利用して抗肥満薬を合成した。これまでに1,2-ジアミンの付加によって減炭反応が進行することを見出していたが、科学的興味のもと、アミノ基の一方をヒドロキシ基にして同様の条件に伏したところ、二重付加体である1.4-ジヒドロオキサジンが収率よく得られた。そこで、本反応の有用性を顕示すべく薬剤合成へと展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画当初の予定と照らして、「研究実績の概要」でも述べたように本研究は当初の計画以上に進展している。具体的な研究成果は以下のとおりである。 1)フェナントレンインドリチジン骨格の構築:ハロアルキンへの付加、続くC-H結合活性化環化反応を鍵反応として当該のアルカロイド合成を検討した結果、その合成を達成したことに加え、その合成中間体からの誘導によりヒドロキシ体の立体選択的構築を行い、インドリチジン骨格上の置換基が異なる種々の類縁体の合成を達成した。さらに、フェナントレン骨格構築法について見直し、スチルベン誘導体を原料とする安全で効率的なC-H活性化環化反応による位置選択的フェナントレン合成法を開発した。 2)キノリノン類の付加反応:前年度に見出したカルボン酸アミドの付加はもっぱら窒素付加で進行していたが、この現況に対して、アミドの互変異生体であるイミド酸から付加が起こる条件を系統的に探索した結果、特定の置換キノリノンを用いることによってカルボン酸アミドによる酸素付加を実現し、薬剤合成へと展開した。 3)1,4-ジヒドロオキサジンの簡便合成:ハロアルキンへの多重付加を検討する中で、2-アミノアルコールの付加により1,4-ジヒドロオキサジンが効率的に生成することを見出した。さらに、生成物の構造を精査したところ、単純な付加環化反応ではなく、付加した後に転位を伴って環化が進行することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
ハロアルキンと各種求核剤の付加反応の有用性を顕示するべく、1)新規求核剤の探索、2)付加体の利用法の開発・拡張、そして3)天然物や機能性分子の合成へと展開する。具体的な事項を以下に列挙する。 1)ハロアルキンに対して、窒素、酸素、硫黄原子を求核部位とする各種求核剤が付加することをこれまでに見出してきた。この適用範囲のさらなる拡大を目指す。 2)付加体が有するハロアルケン構造を利用し、種々の金属触媒によって複雑な分子構造を構築し、もしくは多官能性化合物の合成する。 3)当該年度までに得られた知見と上記検討事項から得られる知見を基に、薬剤や機能分子などの合成を行う。
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Causes of Carryover |
当初目標を超える成果を得たことから天然物合成へと研究を展開させたものの、これら研究も速やかに目標以上の成果を得たため、使用額を軽減できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おおむね当初計画以上の成果を挙げていることから、当該年度は新規求核剤の探索、生成物の新利用法の開拓を拡充させ、有用な新反応の提供を目指す。
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