2015 Fiscal Year Annual Research Report
色素増感太陽電池への応用を指向した新規な含リンπ共役系有機色素の開発
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26810022
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
三宅 秀明 山口大学, 理工学研究科, 助教 (30722425)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 増感色素 / 典型元素 / π電子共役系 / 交差共役 / ラジアレン / フェロセン / 低配位リン化合物 / チオカルボニル化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
斬新な色素分子の開発を指向し、含リン交差共役化合物であるトリホスファ[3]ラジアレンについて新たな誘導体の合成および性質解明を行った。 まず、フェロセン部位を置換基として有する新規なトリホスファ[3]ラジアレンの合成を目指し、その原料となる一級ホスフィンを合成した。ブロモフェロセンを出発原料とする新たな合成法を開発し、原料合成の手間を大幅に簡略化することに成功した。対応するトリホスファ[3]ラジアレンを合成することは出来なかったものの、一級ホスフィンは種々のリン化合物の重要な原料であるため、その安定供給を可能にした意義は大きい。 次に、これまでに得られたトリホスファ[3]ラジアレンの金属錯体合成を検討した。6族金属錯体との反応を行い、トリホスファ[3]ラジアレンを配位子とする錯体を得ることに成功した。生成物の吸収スペクトルや電気化学測定を行い、錯化がもたらす影響を解明した。得られた錯体に対して光照射を行ったところ、リン-炭素二重結合の異性化が進行した。原料のトリホスファ[3]ラジアレンに対して光照射を行っても変化が見られないため、錯化による反応性の変化が明らかとなった。 リン-炭素二重結合と同様にHOMO-LUMOギャップの小さい硫黄-炭素二重結合を有する色素分子の設計および合成を行った。得られた色素分子の吸収帯は硫黄-炭素二重結合によるレッドシフトが起こり、可視光領域に強い吸収帯が見られた。フェロセン部位を置換基として用いた場合には、さらに長波長側に中程度の吸収帯が見られた。その色素分子は安定な酸化還元挙動を示すため、機能性色素としての特長を兼ね備えていた。 以上、リン-炭素および硫黄-炭素二重結合部位と金属錯体部位を組み合わせることで、可視光吸収特性と酸化還元反応の安定性に優れた多彩な色素分子を得ることができた。
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