2015 Fiscal Year Research-status Report
多孔性配位高分子ナノ結晶の内部構造制御による電気化学的イオン吸脱着特性制御
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26810030
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
石崎 学 山形大学, 理学部, 助教 (60610334)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プルシアンブルー / 内部構造 / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はプルシアンブルー(PB)だけでなく、プルシアンブルー類似体(PBA)を用いた結晶内部制御と、その電気化学応答性について評価を進めた。 PBAはPBよりも欠陥構造が多く、親水性内部環境を有しているため、Li+の脱挿入は起こりにくいことが考えられた。しかし、親水性内部環境を有するPBAであってもLi+の脱挿入がスムーズにおこった。これは、内部環境だけでなく、格子サイズ等もLi+の脱挿入に重要であることを示している。UV-Vis吸収スペクトル-電気化学同時測定より、Li+の脱挿入に伴い、膜全体が色変化を示したことから、膜または粒子表面だけでなく、膜(粒子)内部までLi+が脱挿入していることが示された。PBよりもシャープな酸化還元波が現れ、疎水性内部環境を示すPBよりも優れた二次電池正極材としての応用が期待される。 また、二次電池正極材応用へのためには、Li+含有体であるPB還元物(PW,プルシアンホワイト)を合成する必要があるが、PWが不安定であるという問題がある。PBAは、容易に還元体の合成が可能であり、任意のカチオンを導入することが容易である。平成27年度に非水系溶媒中合成やボールミル法などの合成法を行ったが、単一のLi+含有PBA還元体の合成には至らなかった。しかし、合成条件や副生成物の除去法など、Li+含有PBA還元体の合成のための問題点などを明らかとすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標・課題として、①PBAの構造制御とその電気化学応答性の評価、および②Li+含有PB、PBA還元体の合成と電気化学評価であった。 PBAの電気化学評価に関しては、Cu-PBA,Ni-PBAなど種々のPBAを合成し、その内部構造と電気化学応答性の関係について明らかにすることができた。内部構造・内部環境だけでなく、格子サイズもLi+の電気化学的脱挿入には重要であり、PBAを用いたLi+二次電池正極材への応用により期待ができる。 また、当初の計画通り、Li+含有PBおよびPBA還元体の合成と評価を試みた。PBはLi+含有体を安定に合成できなかったが、PBAではLi+含有体の合成ができた。しかし、単一のLi+含有体が合成できなかったことから、合成手法に改良が必要ある。他のイオンが存在する条件では、Li+含有PBA還元体を単一に合成することは困難であったが、合成条件の改善点、問題点を明確にすることができ、平成28年度につながる成果を得られたと考えている。 最終的な目標であるLi+含有PBA還元体を用いたLi+二次電池正極材としての機能評価に向けて、研究は順調に進んでおり、来年度に向けた改善箇所等も明確になったため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成28年度は、PBAの電気化学応答性だけでなく、Li+含有PBA還元体の合成とその電気化学化学特性評価を進めていく。現在、薄膜での電気化学評価を測定するために、フェロシアン酸ナトリウムで表面保護をしているが、Li以外の塩を含むことは好ましくないため、超音波を用いた懸濁液の調製や、フェロシアン酸リチウムの合成および表面保護、分散液の調製を検討する。 Li+含有PBA合成のためには、市販されているNaやK塩であるフェロシアン酸塩を用いるだけでなく、Li塩の合成を行い、よりLi+が入りやすい非水性環境下での合成を試みる。また、ボールミル法など種々の合成法を試み、目的のLi+含有PBA還元体の合成を目指す。また、合成の際の副生成物である無機塩による純度低下を解消するために、熱処理によって容易に脱離可能な化学種(酢酸塩)などを用いた合成など、精製法についても検討を進める。 これまで薄膜での評価を進めてきたが、Li+二次電池正極材としての基礎的評価を進めるために、粉末をグラファイトと合わせたペーストを用いて、チャージ-電圧特性などを測定する。この実験で得られた結果をLi+含有PBA還元体の合成にフィードバックし、より優れた特性を示すLi+含有PBAの合成を目指す。申請者はペーストを用いた測定に関して、細かな条件等の技術がないため、他の研究者に相談し、信頼性の高い結果を得ていく。 上記実験で得られた結果を、論文・学会等で報告し、議論することでより高次の研究へと発展させていく。
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Research Products
(6 results)