2014 Fiscal Year Research-status Report
再生可能な有機ヒドリド供与体としてNADHモデル金属錯体を用いる触媒的還元の開発
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26810032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福嶋 貴 京都大学, 物質ー細胞統合システム拠点, 特定研究員 (40580072)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒドリド / ルテニウム / 再生可能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、自然エネルギーを用いた二酸化炭素還元に必要不可欠な技術として、電気・光化学的に再生可能なヒドリド供与体の創出を目標にしている。近年、本研究代表者等が開発したNAD型配位子を持つ金属錯体は、電気・光化学的2電子還元を受け、配位子がNADH型へ変化することが報告されている。当該年度はNADH型に還元された配位子に高いヒドリド供与能を賦与するために、①「ヒドリドとプロトンが協奏的に配位子から基質に移動する仕組み」、②「配位子上の電子密度を上昇させる仕組み」を持たせた新設計のNAD型配位子1,5-フェナントロリン(1,5-phen)を持つルテニウム錯体[Ru(bpy)2(1,5-phen)]PF6 ([1]PF6)を合成し、その化学的、光化学的還元を行った。 1,5-phenは3-アミノ-2-クロロピリジンと2-ホルミルベンゼンボロン酸を原料とした一段階の反応で合成に成功し、[1]PF6は二核ルテニウムベンゼン錯体に1,5-phenを作用させて[Ru(1,5-phen)(NCCH3)4]PF6を合成した後、2当量のbpyを作用させることで合成に成功した。[1]PF6を過剰量のLiBHEt3で処理することで目的とする1,5-phenがNADH型に還元された[Ru(bpy)2(1,5-phenH2)]PF6 (1,5-phenH2: 5,6-ジヒドロ-1,5-フェナントロリン, [1・H2]PF6)が生成することを1H NMR、ESI-MSにより確認し、アセトニトリル/ジエチルエーテル再沈殿により[1・H2]PF6を単離することに生成した。そして、[1]PF6は犠牲試薬としてトリエタノールアミン、光増感剤として[Ru(bpy)3](PF6)2を含むアセトニトリル溶液中で光化学的2電子還元を受け、[1・H2]PF6を生成することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成26年度はNADH型に還元された配位子に高いヒドリド供与能を賦与するための仕組みである、①「ヒドリドとプロトンが協奏的に配位子から基質に移動する仕組み」、②「配位子上の電子密度を上昇させる仕組み」のうち、①の仕組みのみを備えたNAD型配位子ピリド[2,3-c]-1,5-ナフチリジン(pnp)を用いて研究を展開する予定であったが、pnpの合成は成功しなかった。しかし、①、②両方の仕組みを備えたNAD型配位子1,5-phenの合成に成功し、1,5-phenを持つルテニウム錯体[1]PF6の光化学的2電子還元によるNADH型の錯体[1・H2]PF6の生成に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までに光化学的2電子還元による[1・H2]PF6の生成に成功しているので、平成27年度は[1・H2]PF6による有機基質のヒドリド還元を試みる。 まずは、[1]PF6の化学還元により単離した[1・H2]PF6にカルボニル化合物などのヒドリド還元を受ける化合物を作用させ、反応の結果から[1・H2]PF6のヒドリド供与能を評価する。十分なヒドリド供与能が確認できたら、実際に 触媒量の[1]PF6存在下で有機基質の光化学的還元反応を行い、目的生成物を定量することで触媒反応の効率を評価する。 また、pnp配位子の合成は平成26年度中に成功しなかったが、pnpを持つルテニウム錯体[Ru(bpy)2(pnp)]PF6は光増感剤非存在下でも効率的に光化学的2電子還元を受ける可能性がある点が[1]PF6よりも魅力的であるため、引き続きpnp配位子の合成方法を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度の設備備品費として紫外可視分光光度計の購入費用(\1,500,000)を予定していた。しかし、研究室に元から設置さてる紫外可視分光光度計の稼働率が低下したため、本研究課題のために使用することが可能になった。このため、本研究課題における新たな紫外可視分光光度計の購入を中止した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は[1・H2]PF6による有機物還元の生成物の同定、定量に研究の重点を置く。研究費は化合物の合成に必要な試薬と消耗品、ガス・液体クロマトグラフのカラムの購入費用、研究発表の旅費が多くを占める。以下に詳細を示す。 消耗品購入費用として、配位子・錯体の合成に必要な試薬とガラス器具、有機物還元の生成物定量に必要なガス・液体クロマトグラフ測定用のカラム、NMR測定用の重水素化溶媒の購入費用を予定している。旅費として、国内学会(錯体化学討論会(奈良) 3日間、日本化学会年会(京都) 4日間)、国際会議(環太平洋国際化学会議(ハワイ)6日間)の旅費と滞在費の使用を予定している。
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Research Products
(3 results)