2014 Fiscal Year Research-status Report
第一遷移系列元素を用いた低原子価多核金属錯体の合成と小分子活性化
Project/Area Number |
26810034
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
畑中 翼 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80595330)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 小分子活性化 / 多核金属錯体 / 籠型配位子 / 低原子価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、第一遷移系列元素を中心金属として有する錯体を用いて小分子の多電子還元を可能とすることを目標に、低原子価多核金属錯体の合成を検討した。その結果、平成26年度では、籠型配位子を用いることで、多様な多核金属錯体の選択的合成が可能であることが明らかとなり、マンガン、コバルト、ニッケル、銅などを中心金属として有する多核錯体を合成することができた。また得られたそれぞれの錯体を用いて生体内反応を模倣する反応の観察や、有機基質の還元反応の開発を行った。その結果として、生体内に存在するマルチ銅酸化酵素の反応を模倣する酸素分子の還元的活性化、多核コバルト錯体を用いた二酸化炭素のギ酸イオンへの還元反応を達成した。 現在までに後周期第一遷移系列元素としては唯一鉄のみが籠型配位子内へ導入された状態で単離することができておらず現在合成条件等を検討している。なお補助的な知見を得るために、同等の配位部位を持つ配位子を用いて単核錯体の合成を検討したところ問題なく合成可能であることが確認出来た。得られた錯体は種々の安定な基質との反応が期待できるほど高い活性を有しており、例えば芳香族化合物のC-H結合活性化が可能であることを見出している。 また現在、お椀型配位子を用いた多核錯体合成にも取り組んでおり、これまでに二核鉄錯体の合成、ならびにその還元種への誘導、さらにアゾベンゼンのN=N二重結合の切断にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画として掲げていた多核金属錯体の合成および還元剤を用いた低原子価錯体の合成を達成することができた。また、当初計画で期待していた成果だけでなく、マルチ銅酸化酵素のペルオキソ中間体を模倣する錯体を合成したことや、アゾベンゼンを四電子還元可能な低原子価二核鉄錯体を合成したことは特筆に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られた反応活性な錯体と窒素分子、二酸化炭素、アルカン類との反応を試みる。また新規な低原子価多核錯体の反応性に関して広範な知識を得るため、一般的に良く用いられる基質であるシラン化合物や不飽和化合物などとの反応も実施する。 また基質活性化後に得られる錯体をそれぞれ金属アジド、一酸化炭素、イリドなどを用いて別途合成し、活性化の検討と同時期に活性化下後の基質変換反応も検討し、効率的に研究を行う。変換反応に用いる基質は水素ガス、不飽和炭化水素、プロトン源など多種多様なものを試していきたい。 以上の段階まで問題なく達成できた際には、合成した錯体を触媒として用いた、触媒的活性化/変換反応の開発を行う。地球上に大量に存在し、安価に入手可能な窒素分子、二酸化炭素、アルカン類から有用な化合物を安価な金属を用いて触媒的に合成できれば、学術的に大きな成果であるだけでなく、工業的にも貴重な反応になりうるため、非常に興味深い。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況の都合により、当初購入予定であった試薬、不活性ガスなどの消耗品の一部を購入しなかったため生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は試薬、不活性ガスなどの消耗品の購入に充てる予定である。
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