2014 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー移動法に基づく高効率固相フォトン・アップコンバージョンの実現
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26810036
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楊井 伸浩 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90649740)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フォトン・アップコンバージョン / 超分子 / 三重項 / エネルギーマイグレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的要請の高いフォトン・アップコンバージョンの発現において、従来は色素分子の拡散に依存してきたが、本研究では分子ではなくエネルギーを移動させるという全く新しい方法論を開拓することで、分子が拡散できない状況下においても機能するシステムの構築を目的としている。本年度は特に、超分子ゲルファイバー中に色素分子を高密度に自己組織化させれば、大気下においてもアップコンバージョンを発現できることを見いだした。超分子ゲルを形成する際にドナーとアクセプターを加えておくだけで、空気中においてアップコンバージョン発光を観測できた。これは超分子ゲルを用いたアップコンバージョンの初めての例である。大気中においてアップコンバージョン発光が観測された理由を調べるため、走査型電子顕微鏡、示差走査熱量、粘弾性の測定を行ったところ、色素の添加によりゲルファイバーの太さとゲルの強度が増し、またゲル―溶液相転移温度が上昇した。これらの結果より、色素分子がゲルファイバー中に取り込まれていることが示唆された。また、全ての分子運動が凍結する77 Kにおいてもアップコンバージョン発光が明確に観測されたことから、ゲルファイバー中で色素が密に集合化し、その集合体中で三重項エネルギーがマイグレーションすることでアップコンバージョンを発現したことが示唆された。更に、色素の種類を変えるだけで、近赤外光から可視光、赤色光から緑色光、緑色光から青色光、可視光から紫外光への波長変換を達成し、今回開発した手法の一般性を示すことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では従来の色素拡散型のメカニズムではなく、エネルギー拡散型の新しいメカニズムによるアップコンバージョンの達成を目的としている。本年度は超分子ゲルにおいてその目的を達成したが、これは超分子ゲルを用いたアップコンバージョンの初めての例である。更に、当初は予想をしていなかった空気安定性も発現できたことから、アップコンバージョンの実用化に向けて重要な知見を得ることが出来た。以上の理由により、当初の計画以上に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は太陽光など、より弱い励起光強度でのアップコンバージョンを可能にするために、色素が規則正しく配列した固体系での展開を目指す。そのために複数の色素を複合化する手法を新たに開発し、また空気中におけるより高い安定性の確保を行う。これらの方策により、低光強度かつ空気中で機能する理想的なアップコンバージョン分子システムの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも消耗品やガラス器具等にかかる費用を抑えることが出来たため、当該助成金をより有効に予算を活用するために次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進行に伴い、波長532nmのレーザーの導入が必要であることが分かった。そこで波長532nmの半導体レーザーを導入し、アップコンバージョン発光の測定に使用する予定である。
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