2015 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギー移動法に基づく高効率固相フォトン・アップコンバージョンの実現
Project/Area Number |
26810036
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楊井 伸浩 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90649740)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フォトン・アップコンバージョン / 三重項 / エネルギーマイグレーション / MOF |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的要請の高いフォトン・アップコンバージョンの発現において、従来は色素分子の拡散に依存してきたが、本研究では分子ではなくエネルギーを移動させるという全く新しい方法論を開拓することで、分子が拡散できない状況下においても機能するシステムの構築を目的としている。本年度の検討において、金属錯体骨格(MOF)中にアクセプター分子を規則的に配列させ、MOFを用いたアップコンバージョンに世界で初めて成功した。これまで、太陽光のような弱い光を用いたアップコンバージョンの高効率化は困難を極めており、その実現には①いかにドナーからアクセプターに励起三重項エネルギーを効率よく移動し、かつ②その励起三重項エネルギーをアクセプター分子間で高速に拡散させるか、といった2つの課題をクリアする必要があった。まず1つ目の課題に関しては、これまで固体状態ではドナー分子が凝集してしまい、アクセプター分子にうまくエネルギーを渡せていなかったが、MOFのナノ結晶を合成し、そのナノ結晶表面をドナー分子で修飾することで解決した。次に2つ目の課題に関しては、MOFの構造中にアクセプター部位(ジフェニルアントラセン)を規則的に配列させることで、励起三重項エネルギーを高速に拡散させることに成功した。このように2つの課題を新しい手法により解決し、太陽光程度の弱い光でもアップコンバージョンの効率を最大化(約2%)することに世界で初めて成功した。更に、分子を拡散させる既存の手法では力学特性の劣る柔らかい高分子しか用いることができなかったが、今回開発したドナー修飾MOFナノ粒子はPMMAなどの力学特性に優れた硬いプラスチック中に分散させて用いることが可能であり、汎用性の高いプラスチック材料を高機能化して再生可能エネルギー分野に応用する新たな道を拓いた。
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