2014 Fiscal Year Research-status Report
発光性遷移金属錯体の光化学物性と光誘起反応挙動の媒体制御
Project/Area Number |
26810040
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 亮孝 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 助教 (20708060)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光化学 / 遷移金属錯体 / MLCT / 固相媒体 / りん光 / 光誘起反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
発光性遷移金属錯体の光化学物性を周辺環境により制御することを目指し、特に周辺媒体のリジッドさに着目して研究を行った。媒体として陽イオン交換樹脂を用いた系では、二価の陽イオンであるルテニウム(II)ポリピリジン錯体が樹脂中に導入されていく挙動を観測し、樹脂中における錯体の三重項Metal-to-Ligand Charge Transfer(3MLCT)励起状態からの発光特性を測定・評価した。その結果、錯体分子がおおよそ定量的に樹脂中に導入されること、樹脂中に導入することにより錯体が高エネルギーかつ長寿命な発光を示すことを見出した。またこの高エネルギー発光は配位子の異なる類似錯体でも同様に観測された。 継続して研究を行っているポリ(エチレングリコール)ジメタクリル酸誘導体を用いた系では、これまで報告してきたルテニウム(II)錯体だけでなくオスミウム(II)ポリピリジン錯体でも同様の挙動が得られることを報告し、リジッドな媒体効果の一般性の向上ならびに今後の応用研究への展開に寄与した。さらに特異な温度応答を示す遷移金属錯体の発光特性に関する論文も発表し、これらの錯体の励起状態における周辺環境の効果に関する知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の条件により錯体を陽イオン交換樹脂内部に導入し、その導入挙動や樹脂中における錯体の光化学物性に関する知見を得た。配位子構造の異なる錯体でも同様の挙動が得られるなど、論文投稿に向けた一定の成果を挙げることができた。また既にイオン交換樹脂を用いた光誘起反応の予備的な観測に成功しており当初の計画をよく反映した進行度であるため、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにイオン交換樹脂中に導入した遷移金属錯体の光化学物性に関する知見を得ることができたため、今後は当初の計画に従って樹脂中に導入した金属錯体による光誘起反応の観測および挙動解明を目指す。必要に応じて錯体の種類や含有量、樹脂の種類などを変化させるとともに、樹脂試料に特化させた分光測定システムを構築することにより目的達成に向けて研究を推進する。
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Causes of Carryover |
分光測定に必要な石英セルや光学部品類に並行して推進している研究予算によるものと共通して利用できるものが数多く発生したこと、また年度末あるいは年度をまたいだ物品購入に充当するために次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
樹脂試料に特化させた分光測定システムを構築するために必要な光学部品や試薬類の購入により使用する予定である。
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Research Products
(11 results)