2015 Fiscal Year Research-status Report
発光性遷移金属錯体の光化学物性と光誘起反応挙動の媒体制御
Project/Area Number |
26810040
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 亮孝 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 助教 (20708060)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 光化学 / 遷移金属錯体 / MLCT / 固相媒体 / りん光 / 光誘起反応 / 温度依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では発光性遷移金属錯体の光化学物性を周辺環境により制御することを目指しており、特にリジッドな微小球状の固相媒体に錯体を導入した際の発光挙動変化に着目して研究を行った。市販のイオン交換樹脂に導入した際に一連のルテニウム(II)ポリピリジン錯体が示す発光特性を系統的に解析することによって、これらの錯体からの高エネルギーかつ長寿命な発光が樹脂内部の環境を反映したものと明らかにした。なお、研究代表者が登壇者として以上の内容を発表した日本化学会第95春季年会において、優秀講演賞(学術)を受賞した(2015年4月)。 さらに新たな微小球状媒体として、ナノメートルサイズの直径を持つイオンキャリアを合成し、金属錯体を担持した試料を作製した。ナノサイズ化によってこれまでは難しかった様々な分光測定の実施が可能になり、ナノイオンキャリアに導入したルテニウム(II)やオスミウム(II)錯体が市販のイオン交換樹脂と類似した特異な発光挙動を示すこと、複数種の金属錯体を供担持するとキャリア内部で光誘起反応が発現することを見出した。 遷移金属錯体の発光性の温度依存性に関連する論文も継続的に発表し、発光性金属錯体の励起状態における周辺環境の効果に関する知見を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市販の陽イオン交換樹脂内部に導入した金属錯体の発光挙動を系統的に解析することによって樹脂内に導入した錯体の光化学物性に対する周辺環境の効果の由来を明らかにし、論文投稿に向けた成果を挙げることができた。さらに最近は、より小さいサイズの合成ナノイオンキャリアを媒体として研究を展開している。ナノ粒子化によってこれまでは難しかった様々な分光測定の実施が可能になったため、詳細な光化学物性の解明が期待されるとともに、イオン交換媒体内における光誘起反応を観測することに成功した。以上は当初の計画をよく反映した進行度であり、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
市販のイオン交換樹脂中に導入した遷移金属錯体の光化学物性に関する知見を得ることができたため、これらの結果を学術論文としてまとめる。同時にナノイオンキャリアを対象として、当該年度に観測された光誘起反応の挙動解明と異なる化合物群に対する系の拡張を目指す。平成28年度以降の所属部局における分光測定システムを構築し、目的達成に向けて研究を推進する。
|
Causes of Carryover |
国際会議出席のための旅費に対して学内の予算支援を受けることができたため、次年度使用額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
分光測定システムを構築するために必要な光学部品・機器の購入により使用する予定である。
|
Research Products
(10 results)